小規模不動産特定共同事業とは?登録要件・通常の第1号事業との違いを解説
「不動産クラウドファンディングを新規事業として始めたい」
「空き家や古民家などの再生に、投資家から集めた資金を活用したい」
「通常の不動産特定共同事業は資本金要件が高いので、もう少し小規模な形から始められないだろうか」
こうした事業を検討するとき、選択肢の一つとなるのが小規模不動産特定共同事業です。
小規模不動産特定共同事業は、平成29年(2017年)の不動産特定共同事業法改正によって創設された登録制度です。
通常の不動産特定共同事業より取り扱える事業規模を限定する一方、資本金等の参入要件を緩和し、通常の「許可」ではなく「登録」によって事業へ参入できる仕組みが設けられています。
同じ平成29年改正では、インターネットを利用した不動産クラウドファンディングに対応するため、電子取引業務に関する制度整備も行われました。
ただし、
「小規模だから簡単に始められる」
という制度ではありません。
宅地建物取引業免許、資本金・純資産、業務管理者、契約約款、財産的基礎・人的構成、投資家保護、電子取引業務を自ら行う場合の体制など、事業開始前に確認・整備すべき事項は多岐にわたります。
この記事では、小規模不動産特定共同事業のうち、特に「小規模第1号事業」を中心として、通常の第1号事業との違い、主な登録要件、不動産クラウドファンディングとの関係を解説します。
※本記事は2026年8月時点の法令及び国土交通省・大阪府等の公表資料をもとに制度の概要を整理したものです。個別の事業への法令適用については、契約内容、事業参加者、出資額、対象不動産、資金の流れ、募集方法等によって確認が必要です。
まず確認|小規模第1号事業と通常の第1号事業の違い

画像キャプション:小規模第1号事業と通常の第1号事業の主な違い(2026年8月時点)
小規模第1号事業と通常の第1号事業の大きな違いは、参入時の資本金要件と取り扱える出資規模です。
通常の第1号事業では資本金又は出資の額として1億円以上が必要となるのに対し、小規模第1号事業では1,000万円以上とされています。
その一方、小規模第1号事業では、原則として、
- 1人の事業参加者から受ける出資額:100万円以下
- 事業参加者から受ける出資の合計額:1億円以下
という制限があります。
したがって、小規模第1号事業は、
「資本金等の参入要件を一定程度緩和する代わりに、取り扱える出資規模を限定した制度」
と理解すると分かりやすいでしょう。
そもそも小規模不動産特定共同事業とは?
不動産特定共同事業法では、事業参加者との間で一定の「不動産特定共同事業契約」を締結し、不動産取引から生じる収益等を分配する事業などについて、許可等の制度を設けています。
そのうち一定規模以下のものについて、通常の許可ではなく登録によって参入できるようにしたものが小規模不動産特定共同事業です。
小規模不動産特定共同事業には、
- 小規模第1号事業
- 小規模第2号事業
があります。
この記事で中心的に取り上げる小規模第1号事業は、通常の第1号事業に対応する類型です。
典型的には、
事業参加者から出資を受ける
↓
対象不動産を取得・運用する
↓
賃貸や売却等によって収益を得る
↓
事業参加者へ収益等を分配する
という仕組みになります。
「出資総額1億円以下」は「総事業費1億円以下」ではない
小規模第1号事業について特に誤解しやすいのが、「1億円」という基準です。
小規模第1号事業で制限されているのは、原則として、
事業参加者から受ける出資の合計額が1億円以下
という点です。
これは、
不動産の取得費、改修費、借入金等を含めたプロジェクト全体の事業費が1億円以下でなければならない
という意味ではありません。
不動産特定共同事業では、投資家等からの出資に加えて、金融機関からの借入れなどを組み合わせて事業を行うことも考えられます。
したがって、事業計画を検討するときには、
「プロジェクト全体の総事業費」
と、
「不動産特定共同事業として事業参加者から受ける出資の合計額」
を分けて考えることが重要です。
1人100万円の上限には特例がある
小規模第1号事業では、1人の事業参加者から受ける出資額は原則として100万円以下です。
ただし、法令上の**「特例投資家」**については、1人当たりの出資額について別の上限が設けられています。
ここで注意したいのは、この特例が1人当たりの出資上限についての特例であることです。
小規模第1号事業における「事業参加者から受ける出資の合計額1億円以下」という上限から、特例投資家の出資分が除外されるという意味ではありません。
つまり、
一般の投資家から1億円を集めたうえで、特例投資家からさらに別枠で出資を受ける
という制度ではありません。
小規模第1号事業は登録制|5年ごとに更新が必要
通常の第1号事業が許可制であるのに対し、小規模不動産特定共同事業は登録制です。
登録の有効期間は5年間です。
そのため、5年間を超えて引き続き小規模不動産特定共同事業を行う場合には、登録の更新が必要となります。
また、登録を受けた後も、
- 約款を変更する
- 新たに電子取引業務を行う
- 事業内容や事務所等を変更する
などの場合には、変更内容に応じて変更登録や変更届出等が必要になることがあります。
したがって、
「登録を取得すれば行政手続は終了する」
という制度ではなく、登録後の継続的な管理も必要です。
小規模第1号事業の主な登録要件
小規模第1号事業は、出資総額を1億円以下にすれば登録できるわけではありません。
事業者として継続的かつ適正に不動産特定共同事業を行える体制を備える必要があります。
主なポイントを整理すると、次のようになります。
法人であること
小規模不動産特定共同事業の登録を受ける事業者は、法人であることが前提となります。
したがって、個人事業主としてそのまま小規模第1号事業の登録を受けるという制度ではありません。
資本金又は出資の額1,000万円以上
小規模第1号事業者については、資本金又は出資の額として1,000万円以上が必要です。
通常の第1号事業では1億円以上であるため、この違いが小規模第1号事業を検討する大きな理由の一つになります。
純資産
資本金だけでなく、純資産についても要件があります。
純資産額については、原則として資本金又は出資の額の90%以上であることが必要です。
そのため、
資本金1,000万円を用意したので登録要件を満たした
とは限りません。
会社の財務状況もあわせて確認する必要があります。
宅地建物取引業免許
小規模不動産特定共同事業についても、宅地建物取引業の免許が必要です。
例えば、新会社を設立して不動産クラウドファンディングへ新規参入する場合には、
法人設立
↓
宅地建物取引業免許
↓
小規模不動産特定共同事業登録
など、複数の行政手続を視野に入れて事業計画を立てる必要があります。
業務管理者は「宅建士なら誰でもよい」わけではない
小規模不動産特定共同事業を行う事務所には、業務管理者を置く必要があります。
業務管理者は、単に宅地建物取引士であればよいわけではありません。
事業者の従業者であることに加え、宅地建物取引士であり、不動産特定共同事業についての一定の実務経験、指定講習の修了、登録証明事業による証明など、法令上定められた要件を満たす必要があります。
そのため、
「社内に宅建士がいるので小規模不特事業も始められる」
とは限りません。
資本金や宅建業免許と同じく、業務管理者となる人材を確保できるかは、事業参入の比較的早い段階で確認しておきたいポイントです。
財産的基礎・人的体制も確認される
小規模第1号事業は、形式的な資本金・純資産要件だけを満たせば登録できるものではありません。
登録申請では、財務資料、事業計画、組織体制などを通じて、事業を適確に遂行できる財産的基礎や人的構成を備えているかが確認されます。
行政庁によって具体的な提出資料や事前相談の運用等が定められているため、申請先の最新の案内を確認することも重要です。
例えば大阪府では、小規模不動産特定共同事業の登録申請について事前相談を案内しており、申請書類や事業内容等を確認しながら手続を進める運用となっています。
したがって、
「資本金1,000万円を用意して申請書を作成する」
というだけではなく、
「事業計画・収支・人員・契約・業務管理体制まで含めて登録可能な状態を作る」
という考え方が重要です。
小規模第1号事業で取り扱える契約にも範囲がある
小規模第1号事業では、取り扱うことのできる不動産特定共同事業契約にも範囲があります。
不動産特定共同事業法では、小規模第1号事業について、法第2条第3項第1号又は第2号に掲げる不動産特定共同事業契約を対象としています。
代表的な契約形態としては、
- 任意組合型
- 匿名組合型
などがあります。
一方、通常の第1号事業については、小規模第1号事業にある「法第2条第3項第1号・第2号に限る」という制限はありません。
したがって、
資本金や出資額だけを比較して小規模第1号事業を選ぶのではなく、予定している契約スキームを小規模第1号事業で取り扱うことができるのかも確認する必要があります。
登録行政庁は事務所の所在地によって変わる
小規模第1号事業では、事務所を設置する区域によって登録先が変わります。
原則として、
1つの都道府県内だけに事務所を設置する場合
→ 都道府県知事
2以上の都道府県に事務所を設置する場合
→ 主務大臣
となります。
例えば、大阪府内だけに事務所を設置して小規模第1号事業を行う場合には、大阪府知事への登録申請となります。
なお、具体的な契約類型等によって所管関係の確認が必要となる場合もあるため、事業スキームごとに確認することが重要です。
小規模第2号事業は別のルールがある
小規模不動産特定共同事業には、小規模第1号事業のほかに小規模第2号事業があります。
名称から通常の第2号事業の小規模版のように見えますが、小規模第2号事業は、特例事業者から委託を受けて不動産取引に係る業務を行う、通常の第3号事業に対応する類型です。
また、小規模第2号事業については、事務所が1つの都道府県内だけに所在する場合であっても主務大臣登録となるなど、小規模第1号事業とは異なるルールがあります。
そのため、本記事では小規模第2号事業の詳細には立ち入らず、一般的な参入検討で中心となりやすい小規模第1号事業について解説しています。
不動産クラウドファンディングにも活用できる
小規模第1号事業は、不動産クラウドファンディングにも活用することができます。
不動産特定共同事業法では、インターネットを利用して不動産特定共同事業契約の締結に向けた勧誘等を行う一定の業務について、**「電子取引業務」**として制度が設けられています。
ただし、小規模第1号事業者がクラウドファンディングを活用する場合、必ずしも自社自身ですべての投資家募集・電子取引業務を行わなければならないわけではありません。
国土交通省は、小規模不動産特定共同事業者自身で投資家を集めることが難しい場合などについて、不動産特定共同事業契約の締結の代理・媒介を行う許可を受けた不動産特定共同事業者へ委託する方法も示しています。
そのため、クラウドファンディングへの参入を検討する場合には、
自社で電子取引業務まで行うのか
それとも、
第2号事業の許可を受けた事業者等と役割分担して投資家募集・契約を行うのか
という事業設計も検討対象になります。
自社で電子取引業務を行う場合には体制整備が必要
小規模第1号事業者自身がインターネット上で募集・契約等の電子取引業務を行う場合には、それを適確に遂行するための体制整備が必要です。
Webサイトやクラウドファンディングシステムを構築するだけでなく、
- 投資家への情報提供
- 契約に関する手続
- システム・情報管理
- 法令遵守体制
などを含めて検討する必要があります。
また、小規模不動産特定共同事業者が登録後に新たに電子取引業務を行おうとする場合には、変更登録が必要です。
したがって、不動産クラウドファンディングへ参入する場合には、システム開発に着手する前に、
誰が投資家を募集するのか
誰が契約締結の代理・媒介を行うのか
誰が電子取引業務の責任主体となるのか
といった役割分担を整理しておくことが重要です。
開発を伴う不特事業では投資家の範囲にも注意
不動産特定共同事業は、既存の空き家や古民家を改修する事業だけを対象とする制度ではありません。
一方で、一定額以上の宅地造成や建物の新築等を伴う事業については、投資家の範囲が特例投資家に限定される場合があります。
そのため、
既存建物を取得してリノベーションする事業
と、
土地を取得して新しい建物を建設する開発型事業
では、同じ程度の出資総額であっても検討すべき法令上の論点が異なることがあります。
「出資総額が1億円以下だから小規模第1号事業を利用できる」と、金額だけで判断しないことが重要です。
どのような事業で小規模第1号を検討できる?
小規模第1号事業は、例えば次のような事業構想で検討対象となる可能性があります。
空き家・古民家・空き店舗などの再生
地域に存在する遊休不動産を取得・改修し、賃貸物件、店舗、宿泊施設等として活用する事業です。
国土交通省も、不動産特定共同事業の活用事例として、空き家、古民家、歴史的建築物などの再生事業を紹介しています。
比較的小規模な不動産ファンドから始めたい
通常の第1号事業では資本金1億円以上が必要となります。
そのため、まず比較的小規模な案件からファンド運営の経験や組織体制を構築したい場合には、小規模第1号事業が選択肢となる可能性があります。
不動産クラウドファンディングへ参入したい
出資規模が小規模第1号事業の範囲に収まり、必要な許認可・契約・業務体制を整備できるのであれば、小規模第1号事業を活用した不動産クラウドファンディングも検討できます。
通常の第1号事業を検討した方がよい場合もある
一方で、小規模第1号事業が常に最適というわけではありません。
例えば、
- 事業参加者から1億円を超える出資を受ける予定がある
- 小規模第1号事業では取り扱えない契約スキームを利用したい
- 将来的に大規模な不動産ファンドを継続的に組成したい
- 小規模第1号事業の制限を早期に超える事業展開を予定している
といった場合には、最初から通常の第1号事業を検討した方が、将来の事業計画に適している可能性があります。
重要なのは、
「資本金1,000万円から始められるから小規模第1号事業」
と決めることではありません。
将来的にどの程度の規模で、どのような不動産ファンド事業を展開したいのかまで踏まえて制度を選択することが重要です。
小規模不動産特定共同事業への参入前に整理しておきたいこと
具体的な登録申請へ進む前に、少なくとも次のような事項を整理しておくとよいでしょう。
- 対象とする不動産は何か
- 不動産の取得・改修等に必要な総事業費はいくらか
- そのうち事業参加者からいくら出資を受けるのか
- 1人当たりの出資額はいくらか
- 事業参加者の属性はどうなるか
- どのような不動産特定共同事業契約を利用するのか
- 法人・宅地建物取引業免許等の前提を満たしているか
- 資本金・純資産の要件を満たしているか
- 業務管理者となる人材を確保できるか
- 自社で投資家を募集するのか
- 電子取引業務を自社で行うのか、他の事業者と連携するのか
- 新築・宅地造成等の開発を伴うのか
- 将来的に小規模第1号事業の出資上限を超える事業を予定しているか
こうした事項を整理することで、
小規模第1号事業で進めるのか
通常の第1号事業を検討するのか
他の不動産特定共同事業者との連携を検討するのか
別の事業スキームを検討するのか
が見えやすくなります。
まとめ|小規模第1号事業は「簡易版」ではなく、規模を限定した登録制度
小規模不動産特定共同事業は、一定規模以下の不動産共同投資事業について、通常の不動産特定共同事業より資本金要件等を緩和し、登録による参入を可能とした制度です。
小規模第1号事業では、原則として、
資本金又は出資の額:1,000万円以上
1人当たりの出資額:100万円以下
事業参加者から受ける出資の合計額:1億円以下
登録の有効期間:5年間
という点が、通常の第1号事業との大きな違いになります。
一方で、
- 法人であること
- 宅地建物取引業免許
- 純資産
- 業務管理者
- 契約約款
- 財産的基礎・人的構成
- 投資家保護
- 電子取引業務を行う場合の体制
- 登録後の更新・変更手続
などへの対応も必要です。
また、不動産クラウドファンディングを行う場合にも、自社ですべての電子取引業務を行う方法だけでなく、第2号事業の許可を受けた事業者等と役割分担する方法も考えられます。
したがって、小規模不動産特定共同事業への参入では、
「登録申請をすること」から考えるのではなく、まず事業スキームを整理し、その事業を実現するためにどの許可・登録・体制が必要なのかを確認すること
が重要です。
アイアンバード行政書士事務所では、新しい不動産事業を検討されている事業者様について、事業構想をもとに関係する法令・行政制度を調査し、必要となる許可・登録・届出等を整理する支援を行っています。
「小規模不動産特定共同事業を利用できるか確認したい」
「通常の第1号事業とどちらが自社の事業計画に適しているか整理したい」
「不動産クラウドファンディングを始めるため、必要な許認可や他の事業者との役割分担を確認したい」
といった場合には、事業構想の段階からご相談ください。
※個別案件において、金融商品取引法その他の専門的な法律判断、税務・会計等の検討が必要となる場合には、案件の内容に応じて弁護士、税理士、公認会計士その他の専門家との連携が必要となる場合があります。
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主な参考資料
- e-Gov法令検索「不動産特定共同事業法」
- e-Gov法令検索「不動産特定共同事業法施行令」
- 国土交通省「不動産特定共同事業等について」
- 国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック」
- 国土交通省「小規模不動産特定共同事業実務手引書」
- 国土交通省「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」
- 大阪府「不動産特定共同事業の許可申請、小規模不動産特定共同事業の登録申請等」

