鉄道沿線沿いの看板規制(阪急京都線)

電車に乗った際に車窓からさまざまな看板が見えることがあります。そんな鉄道沿線沿いの看板規制、屋外広告物規制について、今回は阪急京都線を取り上げて解説していきます。

阪急京都線の概要

大阪市屈指のターミナル地帯にある大阪梅田駅と、京都市内の繁華街であり観光拠点の一つでもある四条河原町を、淀川右岸地域を通過して結んでいる路線になります。

なお、西院~四条河原町の区間は地下路線となるため、屋外広告物の沿線での規制という本記事の性質上割愛させていただきます。

通過する市町村で屋外広告物条例が適用される地域は下記のとおりです。
屋外広告物条例の数でいうと大きくは10種になります。なお実際には都市計画法、農地法等を筆頭に、他の法令も関連することとなります。

  • 大阪市(大阪市屋外広告物条例)
  • 吹田市(吹田市屋外広告物条例)
  • 摂津市(大阪府屋外広告物条例)
  • 茨木市(茨木市屋外広告物条例)
  • 高槻市(高槻市屋外広告物条例)
  • 島本町(大阪府屋外広告物条例)
  • 大山崎町(京都府屋外広告物条例)
  • 長岡京市(京都府屋外広告物条例)
  • 向日市(向日市屋外広告物条例)
  • 京都市(京都市屋外広告物条例)

それでは、大阪側から京都側へ向かう視点でみてみることにしましょう。

大阪府下の区間

大阪市(大阪梅田駅~十三駅~淡路駅~相川駅付近)

大阪市内走行区間で屋外広告物条例を意識しておく区間は28駅中7駅と約1/4と、意外と長い区間大阪市内となります。

一般的な禁止物件として、橋・トンネル・高架構造物へはビラ・張り紙等の簡易広告物を含んで原則屋外広告物への掲出は禁止されております。

あとは大阪市の他の区域同様、通常の屋上広告物・壁面広告物等の規制通りとなります。
現状、自家用広告物であれば一つが7㎡未満であれば許可不要となりますが、壁面当たりの総量制限には留意しておく必要があります。

なお、淡路駅周辺地域では現在高架化事業が継続中であり、今後車窓が大きく変化しうる点は頭の片隅に入れておく必要があります。
大阪市:阪急電鉄京都線・千里線(淡路駅付近)連続立体交差事業 (…>都市計画道路>主要事業)

吹田市(相川駅付近~正雀駅付近)

阪急京都線で吹田市を走行する区間は非常に短く、相川駅付近~正雀駅の一区間程度しかありません。吹田市屋外広告物条例が適用されます。

吹田市は比較的屋外広告物条例が厳しめであり、新規・変更許可申請の際は事前協議が必要となります。

また、阪急京都線の両側100mの範囲は非自家用広告物は、制限緩和地域を除き設置できません。

摂津市(正雀駅付近~摂津市駅付近)

阪急京都線で摂津市を走行する区間もまた非常に短く、正雀駅付近~摂津市駅の一区間程度しかありません。摂津市には市の屋外広告物条例が現状存在しないため、大阪府屋外広告物条例が適用されます。

阪急京都線は、一般の表示制限路線13路線の一つに指定されております。これらから展望できる範囲内で両側500m以内の場所では路線からの距離に応じてさまざまな規制がかけられております。さらに線路からの距離が100m未満の場所では、自家用広告物・非自家用広告物を問わず掲出が禁止されております。

摂津市を管轄する土木事務所が窓口となります。

茨木市(摂津市駅付近~総持寺駅)

摂津市駅を少し過ぎたあたりから総持寺駅の区間は茨木市屋外広告物条例が適用されます。駅でいうと3駅程度になります。茨木市屋外広告物条例は2025年1月より施行されました。非常に最近整備されただけのことはあって、割と景観については厳しめの内容となっております。茨木市共通の配慮事項として、まちなみや北摂山系等の自然景観に調和した規模・配置とすること、配置・配列の整理、同じ情報の反復を避けること、必要最低限の文字数・情報、建物と一体的に計画すること、年1回程度の点検等が挙げられます。

茨木市では非自家用屋外広告物禁止地域が鉄道・道路で20路線指定されておりますが、阪急京都線もその一つです。(茨木市告示第65号) 用途地域が商業地域又は近隣商業地域である区域内の区間を除き、路端から100mまでの区域では非自家用広告物が禁止されております。

なお、自家用広告物を掲出する場合は、表示面積の合計が7㎡以下であれば許可不要となります。

高槻市(総持寺駅付近~上牧駅)

総持寺駅付近から上牧駅までは、高槻市内を走行する区間となります。高槻市屋外広告物条例が適用されます。

高槻市でも主要道路・沿線での距離制限がありますが、阪急京都線も路線の一つに指定されております。JR東海道本線と同等の制限がなされております。名神高速道路・新名神高速道路・東海道新幹線はさらに厳しい制限がなされております。ほぼ島本町付近にある上牧駅付近では新幹線と並走する区間もあり、すぐ山側にはJR東海道本線もあるため、非常に制限が厳しくなっております。

3つの区分に応じて、制限内容が異なってきます。

重点制限区域

第二種低層住居専用地域・第一種中高層住居専用地域・第二種中高層住居専用地域

一般制限区域

第一種住居地域・第 二種住居地域・ 準住居地域・ 準工業地域・工業地域・市街化調整区域

制限緩和区域

商業地域・近隣商業地域

高槻市屋外広告物のてびき より

なお、表示面積合計7㎡以内の自家用広告物は、禁止区域内でも適用除外となり許可も不要です。

島本町(上牧駅付近~大山崎駅付近)

上牧駅付近~大山崎駅付近までは島本町の走行区間となります。駅でいうと水無瀬駅だけしかありません。島本町にも屋外広告物条例が存在しないため、大阪府屋外広告物条例が適用されることとなります。

上牧駅~大山崎駅の区間はすぐ真横を東海道新幹線が並走している区間でもあるため、さらに厳しい制限を受けることとなります。加えて線路のすぐ近くには淀川もあり、大阪府景観計画区域の淀川等沿岸区域内でもあります。面型表示制限区域にも指定されているため、大阪府内屈指の制限地域となっております。

路線型表示制限区域と面型表示制限区域

大阪府屋外広告物条例の手引きより

京都府下の区間

大山崎町(大山崎駅~西山天王山駅付近)

大山崎駅から先は京都府走行区間となります。大山崎駅付近~西山天王山駅手前までは乙訓(おとくに)郡大山崎町を通る走行区間となります。車窓上では、大山崎駅から先は新幹線との並走区間が終わり、少し山側へと逸れてJR東海道本線の下をくぐって少しだけ並走する区間があります。名神高速道路をくぐったあたりでJR東海道本線とも並走が終わります。短い区間ながら、見ごたえのある区間となっております。

京都府屋外広告物条例が適用されますが、詳細な基準については、各市町村毎に規則が定められております。

大山崎町の屋外広告物の規制に関する基準等を定める規則

  • 私有地の場合、土地所有者から土地使用承諾書への署名が必要となります。
  • 交差点から20m以内に広告塔を設置する際は、事前に警察署との協議が必要です。
  • 京都府屋外広告物条例では、許可不要の自家用広告物は通常5㎡以下のものとなります。
    ただし、風致地区では2㎡以下まで制限が強化されます。

長岡京市(西山天王山駅付近~西向日駅付近)

西山天王山駅付近~西向日駅付近は、長岡京市の走行区間となります。市としての屋外広告物条例はないため京都府屋外広告物条例が適用されますが、市独自の景観条例や屋外広告物設置許可基準が存在します。

屋外広告物ポータルサイト | 長岡京市公式ホームページ

屋外広告物許可基準 | 長岡京市公式ホームページ

長岡京市景観形成ガイドライン | 長岡京市公式ホームページ

  • 高度地区に応じて10~20m以下までの高さ制限があります。
  • 『周囲との景観の調和』の観点から、色彩にも配慮が求められています。

次の向日市同様、かつて都が存在したこともあり歴史的な史跡等が割と多い地域です。

向日市(西向日駅付近~洛西口駅)

長岡京市を抜けてすぐに向日市へと突入します。西向日駅、東向日駅、洛西口駅の一部が駅として3つ存在します。洛西口駅は向日市と京都市西京区にまたがって存在しています。

向日市もまた京都府屋外広告物条例が適用される地域です。
市のサイトに向日市での各屋外広告物の形態に応じた許可基準が記載されております。
屋外広告物を表示する場合には「許可」が必要です/京都府向日市ホームページ

西向日駅周辺は長岡宮跡があるだけでなく、第一種低層住居専用地域が多くを占めているためおります。線路沿いのすぐの場所を除き自家用広告物、管理用広告物以外の設置は難しいといえます。東向日駅北側にも第一種低層住居専用地域が存在します。

京都市(洛西口駅~四条河原町)

洛西口駅からは京都市となり、以降終点四条河原町まで全て京都市内を走る区間となります。なお、西京極駅~西院駅間で地下に潜り、終点四条河原町までそのまま地下空間を走ります。京都市内の地上部分を走行する区間は3駅少々と、実はあまりなかったりします。

京都市は言わずと知れた、全国でも屈指の景観に厳しい都市です。京都市内の屋外広告物規制の概要については過去記事にまとめてありますのでそちらをご確認ください。

京都市の看板等の屋外広告物許可申請、屋外広告業と景観ガイドライン - 広告支援のアイアンバード行政書士事務所

京都市全域の前提知識・共通事項として、

  • 一般地域第1種~第7種、沿道型地域第1種~第6種等、歴史遺産型第1種・第2種等、計23種類の分類が存在
  • 許可不要の適用除外自家用広告物の面積合計が2㎡未満。それ以上となる場合は許可申請が必要
  • 屋上屋外広告物の設置禁止
  • 点滅式照明・可動式照明の禁止
  • 窓の内側から外向けに広告物を掲示する、特定屋内広告物も規制対象。届出も必要
  • 禁止色や規制対象色が指定されている。
  • 歴史的意匠屋外広告物や有料意匠屋外広告物の優遇
  • 屋外広告物規制区域以外にも、眺望空間保全区域の考え方(眺望を遮らないような配慮≒高さ制限)も必要

等が挙げられます。

京都市:許可基準概要図等(規制区域・地区別)

最後に

鉄道の場合は、自動車が多い幹線道路と違い、運転する人が非常に限定されるため、幹線道路ほどの厳しい規制がそこまでかかっていないようです。しかしながら阪急電車については条例で制限ががかけられている地域が散見され、より制限の厳しい東海道新幹線と並走する区間があったりと、他の鉄道に比べて規制が沿線の規制がやや厳しめと言えるでしょう。

なお、いずれの地域でもぼろぼろの朽ち果てた看板は見た目にも美しくないだけでなく、ほとんどの地域において一般的に禁止屋外広告物にあたります。条例違反となるだけでなく、重大な事故につながる恐れがあり大変危険です。看板は見た目以上に重さがあり、倒壊や落下に巻き込まれてしまった場合は甚大な被害を被ることになります。

  • 著しく汚染、退色、破損したもの
  • 倒壊や落下のおそれがあるもの
  • 信号機や道路標識に類似するもの
  • 道路交通の安全を妨げるおそれのあるもの

これらの看板は大変危険なため、一般的に禁止広告物として指定されております。

今回は阪急京都羽扇をお題に取り上げて沿線の規制状況について振り返ってみました。車窓から時折看板が見えますが、是非お出かけの際に一度注意深くみてみると、新たな気づきが発見できるかもしれません。

当事務所では、この他にも看板等の屋外広告物についてのご相談を承っております。お気軽にご相談ください。

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