鉄道沿線沿いの看板規制(京阪本線)

電車に乗った際に車窓からさまざまな看板が見えることがあります。そんな鉄道沿線沿いの看板規制、屋外広告物規制について、今回は京阪本線を取り上げて解説していきます。

京阪本線の概要

大阪市屈指のオフィス街である淀屋橋と、京都市内の繁華街に近く観光拠点の一つでもある三条を、淀川左岸地域を通過して結んでいる路線になります。実は三条~出町柳間は鴨東線と呼ばれ、厳密には京阪本線ではありませんが、事実上淀屋橋発出町柳行といった具合でひとまとめにされています。

なお、七条~出町柳、淀屋橋~天満橋の区間は地下路線となるため、屋外広告物の沿線での規制という本記事の性質上割愛させていただきます。

通過する市で屋外広告物条例が適用される箇所は下記のとおりです。
条例の数でいうと大きくは6種になります。なお実際には都市計画法、農地法等を筆頭に、他の法令も関連することとなります。

  • 大阪市(大阪市屋外広告物条例)
  • 守口市(大阪府屋外広告物条例)
  • 門真市(大阪府屋外広告物条例)
  • 寝屋川市(寝屋川市屋外広告物条例)
  • 枚方市(枚方市屋外広告物条例)
  • 八幡市(京都府屋外広告物条例)
  • 京都市(京都市屋外広告物条例)

それでは、大阪側から京都側へ向かう視点でみてみることにしましょう。

大阪府下の区間

大阪市(天満橋駅~千林駅付近)

大阪市内走行区間で屋外広告物条例を意識しておく区間は淀屋橋~天満橋が地下区間となることもあるためか非常に短く、天満橋~千林駅付近までの5駅しかありません。天満橋から地上に出て以降は区間内のほとんどが高架区間となります。

天満橋駅⇒京橋の間で地上区間となりますが、地上に出てくる大川付近のごく一部分は広告物景観形成地区に指定されているため、注意が必要です。

一般的な禁止物件として、橋・トンネル・高架構造物へはビラ・張り紙等の簡易広告物を含んで原則屋外広告物への掲出は禁止されております。

通常線路や高速道路付近での屋外広告物は規制されていることが多いですが、大阪市については阪神高速道路付近については規制があるものの、鉄道路線付近については特段の規制は本記事執筆時点ではないようです。もっとも、景観地区等別の観点で局所的に規制がかかっている場合があります。関目~森小路間で阪神高速道路をくぐる部分があり、局所的に規制がかかっております。

あとは他の区域同様、通常の屋上広告物・壁面広告物等の規制通りとなります。

守口市・門真市(千林駅~大和田駅~萱島駅付近まで)

千林付近~大和田付近の区間は守口市・門真市を走行することとなりますが、これらの市では大阪府屋外広告物条例が適用されます。

一般的に河川・線路・高速道路付近は特別な規制がかかることが多いですが、『大阪府屋外広告物条例に基づく許可区域、禁止区域並びに表示の方法の制限に係る区域及び広告物又は掲出物件の指定』を確認してみても京阪電車向けの特有の規制は特段見当たりません。通常の屋上広告物、壁面広告物等の規制が適用されると解されます。

淀川等沿岸区域では特別な制限がかけられておりますが、守口市・門真市走行区間についてはそれらからも離れているため、特段の影響を受けないようです。一方で、阪急京都線、JR東海道線、JR東海道新幹線を擁する淀川右岸側では、淀川等沿岸区域の規制を受ける区間も存在します。

とはいえ、近畿自動車道や府道大阪中央環状線等の幹線道路や高速道路と交差するため、若干ながら規制が存在しますので注意が必要です。

寝屋川市(萱島駅付近~香里園駅付近)

萱島駅付近~香里園駅付近は、寝屋川市屋外広告物条例が適用されます。萱島駅、寝屋川市駅、香里園駅周辺の一部では特別な規制がかけられておりますので注意が必要です。

寝屋川市~香里園の間は第二種中高層住居専用地域が多く存在するため、適用除外の広告物以外は設置ができません。代表的なものでいえば自家用広告物ですが、表示面積が7㎡を超えないようにという制限があります。

その他一般的な屋外広告物に関する規制については、寝屋川市屋外広告物条例による屋外広告物の手引きをご確認ください。

なお、寝屋川市駅~枚方市駅の大部分にて連続立体交差事業が計画されており、現在地上部分を走っている区間が今後高架化される見込みです。現在高架化工事を順次行っておりますが、まだまだ先の話にはなるかと思われます。

枚方市(香里園駅付近~樟葉~橋本付近まで)

香里園付近~樟葉付近の区間は枚方市屋外広告物条例が適用されます。

香里園~光善寺付近の現状地上区間は、線路横を道路が並走しておりますが、その道路に面している部分からすぐ奥は禁止地域だらけとなっているため注意が必要です。

光善寺~枚方公園の間は国道一号線の下を通過する部分がありますが、その周辺は道路軸制限区間として厳しめの規制がなされています。国道一号線を超えるとすぐ淀川と反対側にひらパーでおなじみのひらかたパークがみえます。

ひらかたパークを超えたあたりから枚方公園駅、枚方市駅付近は河川軸制限区域に入り、規制について注意が必要です。また枚方公園駅~枚方市駅付近の淀川沿いの地域は景観重点地区に指定されている枚方宿地域があり、マンセル表色系の色彩制限も踏まえて事前協議が必要となるため特に注意が必要です。枚方市駅周辺自体も特定区域に指定されていることもあり、注意が必要です。

ひらパー付近~枚方市駅付近までが、京阪本線沿線の大阪府下の部分で最も規制が複雑な地域と言えます。

枚方市駅~御殿山間も淀川側の地域は河川軸制限区域に指定されており、反対側の地域も一部禁止地域等や河川軸制限区域の重点制限区域が存在します。

御殿山駅~牧野駅も京都守口線との並走区間は線路沿い両側が河川軸制限区域となっております。道路との並走区間が終了して住宅地の合間を走行する区間からは禁止地域等が多い地域となります。一部分だけ規制区域外の部分もあります。牧野駅周辺も河川軸制限区域が多いです。

牧野駅~樟葉駅~橋本駅の区間は牧野駅すぐ規制区域外の地域が少しだけ存在するものの、以降大阪府出て京都府に入るまでの区間は全域が河川軸制限区域となります。樟葉駅~橋本駅の区間には楠葉台場後史跡公園がありますが、こちらは指定文化財となっております。

京都府下の区間

橋本駅付近~八幡市駅付近~木津川宇治川橋梁付近

橋本駅付近~八幡市駅付近は京都府八幡市を通り、京都府屋外広告物条例が適用されます。

府道京都守口線と並走気味に走っておりますが、府道京都守口線および道路境界線から200m以内の市街化調整区域内は禁止地域に指定されています。橋本駅~八幡市駅の区間の山林部分が市街化調整区域に該当します。また、同じく禁止地域扱いの生産緑地ごく一部も存在します。木津川橋梁~宇治川橋梁の間の田園地帯も市街化調整区域であるだけでなく農業振興指定予定地域となっているため、農地以外への用途の活用が非常に困難です。

なお、私有地の場合、土地所有者から土地使用承諾書への署名が必要となります。

京都市(宇治川橋梁付近~七条)

宇治川橋梁付近からは京都市伏見区となり、以降終点出町柳まで全て京都市内を走る区間となります。東福寺駅~七条駅の区間にて地下路線となり、以降事実上の終点である鴨東線出町柳駅まで京都市内となります。

言わずと知れた、全国でも屈指の景観にうるさい都市です。京都市内の屋外広告物規制の概要については過去記事にまとめてありますのでそちらをご確認ください。

京都市の看板等の屋外広告物許可申請、屋外広告業と景観ガイドライン - 広告支援のアイアンバード行政書士事務所

京都市全域の前提知識・共通事項として、

  • 一般地域第1種~第7種、沿道型地域第1種~第6種等、歴史遺産型第1種・第2種等、計23種類の分類が存在
  • 許可不要の適用除外自家用広告物の面積合計が2㎡未満。それ以上となる場合は許可申請が必要
  • 屋上屋外広告物の設置禁止
  • 点滅式照明・可動式照明の禁止
  • 窓の内側から外向けに広告物を掲示する、特定屋内広告物も規制対象。届出も必要
  • 禁止色や規制対象色が指定されている。
  • 歴史的意匠屋外広告物や有料意匠屋外広告物の優遇
  • 屋外広告物規制区域以外にも、眺望空間保全区域の考え方(眺望を遮らないような配慮≒高さ制限)も必要

等が挙げられます。

宇治川橋梁付近~淀駅~中書島駅付近まで第5種・第6種地域(店舗・事務所・工場・倉庫が多め)が多めとなっております。

中書島駅~伏見桃山駅の間の大半は、京町屋条例に基づく指定地区とされており、屋外区小谷物の規制上では歴史遺産型第2種地域となっております。意匠が優れた和風のものである等非常に厳しい地域です。

伏見桃山駅~丹波橋駅は近鉄京都線も並走気味に存在しますが、このあたりは第4種(店舗・事務所)や第2種(閑静な住宅等)が混在しております。

丹波橋駅~東福寺付近は、屋外広告物条例の一般地域第3種・第5種(特徴的な意匠形態の建築物が調和した町並み)といった具合で、伝統的な民家が随所にみられる閑静な住宅地が多めです。ただし、合間に工場が存在する地域もあり、都市計画法上用途地域でみると準工場地域もある等、非常にややこしいの一言に尽きます。

最後に

鉄道の場合は、自動車が多い幹線道路と違い、運転する人が非常に限定されるため、幹線道路ほどの厳しい規制がそこまでかかっていないようです。ただし、淀川左岸の東海道新幹線やJR東海道線のように、万が一列車運行に支障が発生した場合は他の路線よりも被害の影響がより広範囲に及ぶ場合は、厳しめに規制されやすいようです。

なお、いずれの地域でもぼろぼろの朽ち果てた看板は見た目にも美しくないだけでなく、ほとんどの地域において一般的に禁止屋外広告物にあたります。条例違反となるだけでなく、重大な事故につながる恐れがあり大変危険です。看板は見た目以上に重さがあり、倒壊や落下に巻き込まれてしまった場合は甚大な被害を被ることになります。

  • 著しく汚染、退色、破損したもの
  • 倒壊や落下のおそれがあるもの
  • 信号機や道路標識に類似するもの
  • 道路交通の安全を妨げるおそれのあるもの

これらの看板は大変危険なため、一般的に禁止広告物として指定されております。

今回は京阪電鉄をお題に取り上げて沿線の規制状況について振り返ってみました。車窓から時折看板が見えますが、是非お出かけの際に一度注意深くみてみると、新たな気づきが発見できるかもしれません。

当事務所では、この他にも看板等の屋外広告物についてのご相談を承っております。お気軽にご相談ください。

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