歩行者利便増進道路(ほこみち)制度
目次
制度概要
歩行者利便増進道路(ほこみち)制度は、都市部における歩行者の利便性と安全性を向上させるために制定された制度です。この制度は、歩行者専用道路の整備を促進し、都市環境の改善を目指しています。内閣府や国土交通省などの公的機関がこの制度を支援し、その実施を進めています。令和2年の道路法改正により歩行者利便増進道路が創設された、比較的新しい制度となっております。
ひらたくいえば、道路管理者(国・都道府県・市町村)が主体の『歩きたくなる道』を作る制度です。
目的
ほこみち制度の主な目的は以下の通りです:
- 歩行者の安全確保:歩行者専用道路の整備により、自動車との接触事故を防ぎます。
- 利便性向上:都市部での歩行者の移動をスムーズにし、ショッピングや観光などの活動を支援します。
- 都市の魅力向上:緑化やベンチの設置などにより、都市空間の質を高め、居心地の良い環境を提供します。
制度の具体的内容
ほこみち制度には以下のような具体的な取り組みが含まれます:
- 歩行者専用道路の整備:都市計画に基づき、歩行者専用道路を新設・改修します。
なお、道路幅があまり広くない場合等、車道と歩行者専用道路の分離が必須の要件とされておりません。 - バリアフリー化:車いすやベビーカーの利用者も快適に移動できるように、段差の解消やエレベーターの設置を推進します。
- 環境整備:街路樹や花壇の設置、街灯の増設など、歩行者空間の美化・安全性向上を図ります。
制度導入のメリット
1,占用特例制度(オープンテラス等がつくりやすくなる)
歩行者利便増進道路のうち利便増進誘導区域を指定した場合、無余地性の基準にとらわれない占用特例が認められます。
つまり、特例区域を定めておくことによって、
- 道路に看板やテーブル等が設置しやすくなり、オープンテラスのカフェがより映えるようになる。
- ベンチやレンタサイクルの駐輪場等、利便性があがるものが設置しやすくなる。
- 飲食施設、ショッピング等これらに類する施設を設置しやすくなる。
といった具合に、より創意工夫を活用した空間づくりが可能となります。
2,道路占用料の減額
通常、道路を占用する場合には占用料を支払う必要がありますが、ほこみち制度が適用された場所では、
道路の維持管理の協力、つまりゴミ掃除等も合わせても行う場合、占用料が減額されます。
※ 国道の場合は90%減額となります。
3,公募占用制度と占用許可期間の延長
利便増進誘導区域で、公募で占用者を選定することが好ましい歩行者利便増進施設については、通常5年の道路占用許可が最長20年に延長されます。
つまり、公募でよりよい提案をしてくれる占用希望者を募ることができ、その場合は最長20年の道路占用許可を認めることができます。費用の掛かる規模の大きい施設を誘致しやすくなります。
従前から占用されていて引き続き占用される場合等、別に公募しなくてもよいです。
導入事例
東京都や大阪府などの大都市では、既にいくつかのほこみちが整備され、成功事例として挙げられています。これらの都市では、歩行者専用道路の整備により、商業施設の利用者が増加し、経済効果も上がっています。
大阪付近での具体例として
- 大阪市の御堂筋
- 大阪市の南海なんば駅付近
- 枚方市の京阪樟葉駅前付近
- 京都の蛸薬師通、新京極のアーケードから河原町の大通りまで
ちなみに都道府県で最も登録路線数が多いのが長野県です(2024年3月末時点で16路線)
後述の参考リンクから、現在登録されている路線を確認することができます。
課題と展望
ほこみち制度以外の国家戦略特区等の別の制度を利用して整備されている例もありますので一概には言えませんが、
令和になってから創設された新しい制度であり、2024年3月末時点で全国で139路線しかありません。
北海道など、存在していそうで存在していない都道府県もございます。
ほこみち制度以外については、別の記事にて取り上げております。
道路空間の活用に関する主な制度のご紹介 | アイアンバード行政書士事務所 (ironbird.jp)
導入までの道のり
ほこみち制度を導入したい場合は、
道路を管理している自治体(地方整備局)に働きかけて、ほこみち指定を目指す形となります。
道路管理者(国・都道府県・市町村)が市町村長、公安委員会や警察署長といった警察関係者との協議が必要となります。間に公募占用手続きが入り、事業者を公募する場合もあります。
最後に
ほこみち制度の導入には、地元住民や商業施設の協力が不可欠です。また、予算の確保や効果的な運営方法の検討も必要です。今後は、さらに多くの自治体でこの制度が導入され、歩行者の利便性と安全性が向上することが期待されます。
商店街・町内会等の地域の団体の方に是非ご周知したい、そんな制度です。