農地に看板等の屋外広告物を設置する際の話
農地の中に看板を立てたい場合もあるかと思います。今回の記事では、農地に看板を立てる際の注意点について簡単に解説していきます。
目次
屋外広告物という視点
野立て看板という場合が多くなるかと思いますが、屋外広告物に該当し、各種屋外広告物法令・景観法令が関連してきます。
農地が都市内の隙間の土地にある場合や、郊外又はほぼ周りが森林に囲まれた地域等、都市計画法上の用途地域に当たるのか当たらないのか、市街化調整区域なのか等によってもかわってきます。
景観を守るという観点で、都市部の商業地域よりかは一般的に制限がかかりやすくなっております。ただ一方で道案内の看板が欲しい場合もあります。
自身の自家用広告物でない場合や一定以上の大きさの自家用屋外広告物の場合は、屋外広告物設置許可申請が必要となってきます。その市町村で屋外広告物条例が施行されていない場合は、都道府県の屋外広告物条例を確認することとなります。屋外広告物を設置しようとする市町村によって、窓口がどこになるかは大きく変わってきます。
一般的な屋外広告物設置ガイドラインについては、当事務所でも下記の記事にて取り扱っております。
一般的な屋外広告物設置のガイドライン - 広告手続き支援のアイアンバード行政書士事務所
なお、詳細については地域によって大きく変わってくるため、個別具体的な案件についてのご相談は是非当事務所までお問い合わせください。
農地という視点
いわゆる農地転用
日本の農地は、国民に対する食料の安定供給の確保の観点から農地以外への利用について規制がかけられています。農地や牧草地を本来の用途以外で利用する場合は、いわゆる『農地転用』と呼ばれる手続きが必要となってきます。
- 農地法3条許可
⇒ 所有権の移転、又は地上権、永小作権、使用貸借、賃借権等の使用収益を目的とする権利の設定若しくは権利移転の場合に必要となる許可 - 農地法4条許可
⇒ 農地の所有者自らが農地を農地以外に転用する場合に必要となる許可 - 農地法5条許可
⇒ 自分の農地を事業者等に売るか貸すかして、買主又は借主が転用する場合に必要となる許可又は届出
想定されるケースとしては、農地所有者自らが看板を立てる場合と、別の事業者の看板を立てる場合で大きく二別できるでしょう。
一般的な基準
不許可となる場合について一般的な基準が存在します。
- 転用の確実性が認められない場合
⇒ 関係権利者の同意がない場合、他法令の許認可の見込みがない場合等。 - 周辺のうちへの被害防除措置が適切でない場合
- 農地の利用の集積に支障を及ぼす場合
- 一時転用の場合に、農地への原状回復が確実と認められない場合
どの立地の農地?
農地区分も考える必要があります。一般的に第3種農地以外は原則不許可・例外許可となり、ハードルが高くなる点は留意する必要があります。
なお、市街化調整区域内であった場合、開発許可も必要となってきます。
農用地区域内農地
市町村が定める農業振興地域整備計画において、農用地区域とされた区域内の農地。
例外許可の例
農業用施設、農産物加工、販売施設等の農用地区域の指定用途に供する場合
甲種農地
市街化調整区域内(市街化を抑制することにされている地域)の農業公共投資後8年以内の農地で、集団農地で高性能農業機械で営農可能農地
例外許可の例
農業用施設、農産物加工・販売施設、土地収用事業の認定を受けた施設、一定の場合の集落接続の住宅等、地域農業振興に関する地方公共団体の計画に基づく施設、農村産業法、地域未来投資促進法等による調整が整った施設。
第1種農地
10ヘクタール以上の集団農地で、産業公共投資対象農地。つまり生産能力の高い農地。
例外許可の例
農業用施設、農産物加工・販売施設、土地収用事業の認定を受けた施設、一定の場合の集落接続の住宅等、地域農業振興に関する地方公共団体の計画に基づく施設、農村産業法、地域未来投資促進法等による調整が整った施設。
第2種農地
農業公共投資の対象となっていない、小集団の生産力の低い農地。
市街地として発展する可能性のある区域内の農地。
第3種農地に立地困難な場合等に許可されることがあります。
第3種農地
市街地にある区域内や、都市的整備がされた地域の農地。
こちらは農地転用が原則許可となります。
※開発許可
市街化調整区域内であった場合、開発許可も必要となる可能性があります。(駅舎、図書館等の公共公益施設等は、開発許可が不要とされています)
都市計画法上の開発行為とは、主として建築物の建設又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更、のことを指します。
特定工作物とは、ひらたくいえば石油ガス電気等のエネルギーに関する施設のようなものや野球場・テニスコート等のレジャー施設をイメージしていただければと思います。
詳しくは、都市計画法施行令に定められております。
都市計画法施行令 | e-Gov 法令検索
技術基準
防災上の措置等に関する基準。
不用意に開発を認めてしまうと、森林火災や土砂崩れ等の自然災害を誘発するおそれがあるので、それを防ぐというイメージでとらえていただければわかりやすいかと思われます。
立地基準
市街化調整区域で許容される開発行為の類型を定める基準。
周辺住民の日常生活に必要な施設や、農産物等の加工・貯蔵施設といった具合で、市街化促進の恐れがなく、市街化区域での実施が困難又は不適当な開発行為が該当してきます。
許可が不要な開発行為
- 農林水産業用の建築物
- 農林漁業を営む者の住宅
- 公益上必要な建築物のうち、開発区域・周辺区域の土地利用に支障がない建築物
⇒鉄道施設、公民館等 - 都市計画事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業、防災街区整備事業として行う場合
- 公有水面埋立法の免許を受けた埋立地で竣工認可をうけていないものにおいて行う開発行為
- 非常災害ための必要な応急処置
- 通常の管理行為、軽易な行為等
⇒ 仮設建築物や物置等
自身の農地に自家用屋外広告物を設置したい場合
屋外広告物法令の視点
自家用屋外広告物、管理用屋外広告物に該当する場合は、一定の大きさまで等の一定の要件を満たせば屋外広告物設置許可申請は不要となります。
農地法令の視点
農地法4条許可が必要となる可能性が一応考えられます。
なお、農地法4条許可が不要な場合がいくつかございます。
- 市街化区域内の農地で、事前に農業委員会に届け出る場合
- 200㎡未満の農業用施設を設置する場合。 ⇒農業委員会に届出は必要
- 国や都道府県、市町村が一定の公共用施設の為に転用する場合
- 土地収用法によって収容又は使用される場合
一般的な野立て看板を設置する場合であれば、通常面積はそんなにとらないかと思われますので、自身の農地で栽培している農作物の宣伝の用途であれば、農業用施設として通る余地がないとも言い切れません。
自分の農地の一部を他に貸して屋外広告物を設置したい場合
屋外広告物法令の視点
他の事業者に農地の一部を貸して看板を設置する場合は、自家用広告物に当たらないため、大きさの種類を問わず屋外広告物設置許可申請が必要となります。なお、地域によってはそもそも禁止地域に該当してしまう場合も想定され、許可がおりないケースも十分に考えられます。
農地法令の視点
農地法5条許可が必要となる可能性が一応考えられます。
なお、農地法5条許可にも許可が不要な場合がいくつかございます。
- 市街化区域内の農地で、事前に農業委員会に届け出る場合
- 200㎡未満の農業用施設を設置する場合。 ⇒農業委員会に届出は必要
- 国や都道府県、市町村が一定の公共用施設の為に転用する場合
- 土地収用法によって収容又は使用される場合
農地所有者のものでなくとも農業用施設であると認められる場合であれば、許可ではなく届出で済むケースも考えられます。ただしハードルは自家用広告物設置の場合に比べて上がると言わざるを得ません。
最後に
屋外広告物は設置を検討している地域や大きさ等、さまざまな要素によって大きく状況が異なってくるため、一概にこうであるというのは非常に言いづらい部分があります。ただ、なんとなく大丈夫だろうと思って設置した場合は、後々非常に厄介なことになる可能性が十二分に考えられます。検討段階のうちから法令面のケアは必要と言えるでしょう。
当事務所では、農地での看板設置に限らず屋外広告物について広くご相談を承っております。是非お気軽にご相談ください。