音に関する法令
目次
包括的な概要
音は屋外広告物には該当しませんが、各種法令で規制がなされており、工事現場などでは各種届出等が必要な場合もあります。
音は私たちの日常生活に欠かせない一方で、過度の騒音は生活の質を低下させる要因ともなります。日本では、音環境を適切に管理し、市民の生活の質を保護するために、さまざまな法令が制定されています。この記事では、音に関する主要な法令と関連情報を詳しく解説します。
音の量、騒音の目安
環境省によると、都心・近郊における騒音の目安は以下のような具合となります。
一般環境騒音について | 大気環境・自動車対策 | 環境省 (env.go.jp)
1. 環境基本法
環境基本法は、日本の環境政策の基本的な枠組みを提供する法律です。この法律は、環境の保全と持続可能な利用を目的としており、音環境の保全もその重要な側面の一つとして位置づけられています。
主な特徴
- 環境保全の基本理念を定めている
- 国、地方公共団体、事業者、国民の責務を明確化
- 環境基本計画の策定を義務付け
- 騒音を含む環境問題に対する施策の基本方針を提示
音環境に関する側面
- 騒音の発生抑制に関する基本的な方針を示す
- 地域住民の生活環境を守るための施策の必要性を強調
基準
主な基準は、以下の通りです。
なお、ここでは昼間は午前6時~午後10時、夜間は午後10時~午前6時とされております。
備考
- AAは社会福祉施設や療養施設等が設置されている地域
- Aは住居専用地域
- Bは住居が主となる地域
- 相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域
道路に面する地域については、若干ながら条件が緩和されております。
さらに、幹線道路沿いでは下記のように例外的な規制がなされております。
参考: 騒音に係る環境基準について | 環境省 (env.go.jp)
2. 騒音規制法
騒音規制法は、特定の地域における騒音の発生を規制するための具体的な法律です。この法律は、工場、建設現場、交通機関などから発生する騒音を対象としています。
主な規制対象
- 工場・事業場からの騒音
- 建設作業に伴う騒音
- 自動車や航空機などの交通騒音
規制の仕組み
- 騒音発生施設の設置や特定建設作業の実施には事前の届出が必要
- 地域や時間帯に応じた騒音の規制基準を設定
- 基準超過時には改善勧告や命令が可能
- 違反に対しては罰則規定あり
特記事項
- 住宅地や学校近辺では、より厳しい規制基準が適用される場合が多い
- 地方公共団体は、地域の実情に応じてより厳しい上乗せ基準を設定できる
3. 地域の条例
各地方自治体は、それぞれの地域特有の音環境に対処するための条例を制定しています。これらの条例は、騒音規制法を補完し、よりきめ細かな規制を可能にします。
条例で規制される主な項目
- 音楽イベントや祭りなどの開催時における騒音制限
- 夜間の音の抑制(深夜営業の規制など)
- 動物の鳴き声に関する規制(ペットの飼育マナーなど)
- 家庭内での生活騒音(楽器演奏、テレビの音量など)
条例の特徴
- 地域の実情に即した細かな規制が可能
- 住民の生活環境を直接的に保護
- 罰則規定を設けている条例もある
その他具体的な条例の例や自治体の取り組み等
- 拡声機による暴騒音の規制に関する条例 (osaka.lg.jp)
- 大阪府生活環境の保全等に関する条例 (osaka.lg.jp) 96条~
- くらしの騒音ハンドブック/大阪府(おおさかふ)ホームページ [Osaka Prefectural Government]
4. 建築基準法
建築基準法は、建物の安全性や居住性を確保するための基準を定めていますが、音環境に関する規定も含まれています。
音環境に関する主な規定:
- 集合住宅における隣接住戸間の遮音性能基準
- 建物の外壁や開口部の防音性能に関する基準
- 設備機器(エレベーター、給排水設備など)の騒音対策
遮音性能の基準例
- 床衝撃音:重量衝撃源L-55以下、軽量衝撃源L-45以下
- 空気伝搬音:DR-45以上(壁・床の遮音等級)
5. 音響測定基準
音響測定基準は、騒音や音の影響を客観的に評価するための技術的基準を提供します。これにより、騒音の測定方法や評価基準が統一され、公平かつ適切な対策が可能となります。
主な測定基準
- JIS Z 8731(環境騒音の表示・測定方法)
- JIS A 1418(建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法)
- ISO 1996(環境騒音の記述、測定及び評価方法)
測定項目の例
- 等価騒音レベル(LAeq)
- 時間率騒音レベル(LA5、LA50、LA95など)
- 最大騒音レベル(LAmax)
6. 著作権法
著作権法では、音楽作品の創作者の権利を保護し、文化の発展に寄与することを目的としています。
主な保護対象
- 楽曲(作詞・作曲)
- 音源(録音物)
- 実演(演奏、歌唱)
音楽利用に関するおおまかな規定
- 公共の場での音楽使用には著作権者の許可が必要
- 営利目的での音楽使用には使用料の支払いが必要
- 私的使用目的の複製は一定の範囲で認められる
7. 商標法
CMで使用されている音楽がよい例ですが、実は音も商標登録することができます。
長期間にわたりCM等で流し続けることにより、その地域一体で圧倒的な認知を獲得する有効な手段となりえます。
まとめ
日本の音に関する法令は、環境保護、公共の安全、地域社会の調和を目的として多岐にわたっています。これらの法令は、以下の点で重要な役割を果たしています:
- 生活環境の保護:過度の騒音から市民の生活の質を守る
- 公平性の確保:音の発生と規制に関する明確な基準を設定
- 文化的価値の保護:音楽著作権の保護を通じて創作活動を支援
- 地域特性への対応:地方自治体による条例制定で地域の実情に即した対策が可能
今後も、技術の進歩や社会のニーズの変化に応じて、これらの法令の適切な運用と見直しが求められるでしょう。市民、事業者、行政が協力して、快適な音環境の実現に向けて取り組むことが重要です。