景観法の申請・届出等

景観法の申請・届出・認可

景観計画区域内の行為の届出(景観法16条)

景観計画区域内において、建築物・工作物の新築、増築、改築・移転、外観の変更を伴う修繕・模様替え・色彩の変更、開発行為(土地の区画形質の変更)を行う場合は、景観行政団体の長に届出が必要となります。

届出をしなかった、又は虚偽の届出をした場合、30万円以下の罰金に処されます。

景観整備機構の指定申請(景観法92条)

一般社団法人、一般財団法人、特定非営利活動法人(NPO法人)で、
景観法93条に規定される業務を適正かつ確実にできる団体を、『景観整備機構』として認定する申請

第九十三条 機構は、次に掲げる業務を行うものとする。

 良好な景観の形成に関する事業を行う者に対し、当該事業に関する知識を有する者の派遣、情報の提供、相談その他の援助を行うこと。

 管理協定に基づき景観重要建造物又は景観重要樹木の管理を行うこと。

 景観重要建造物と一体となって良好な景観を形成する広場その他の公共施設に関する事業若しくは景観計画に定められた景観重要公共施設に関する事業を行うこと又はこれらの事業に参加すること。

 前号の事業に有効に利用できる土地で政令で定めるものの取得、管理及び譲渡を行うこと。

 第五十五条第二項第一号の区域内にある土地を景観農業振興地域整備計画に従って利用するため、委託に基づき農作業を行い、並びに当該土地についての権利を取得し、及びその土地の管理を行うこと。

 良好な景観の形成に関する調査研究を行うこと。

 前各号に掲げるもののほか、良好な景観の形成を促進するために必要な業務を行うこと。

景観の観点からまちづくりに参画したい、という団体の方におすすめの制度です。

景観重要建造物・景観重要樹木に関する申請・届出

  • 指定の提案
  • 変更行為の申請
  • 所有者の変更の届出
  • 景観行政団体又は景観整備機構と所有者の間で締結される管理協定の認可

景観重要建造物、景観重要樹木については、文化財保護法の特別史跡名勝天然記念物・史跡名勝天然記念物に指定又は仮指定された場合は、適用されません。(文化財保護法の制度 > 景観法の制度)

景観協定の締結等の認可(景観法81条~91条)

景観計画区域内の一段の土地の所有者及び借地権を有する者は、全員の合意により、景観行政団体の長の認可を受けた上で景観協定を締結することができる。

当該土地の区域内に借地権の目的となっている土地がある場合は、借地権の目的となっている土地の所有者の合意は要しない。(土地の所有者又は借地の借地権をもっている人でよい)

景観協定において定める事項は景観法81条2項に規定されています。

 景観協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 景観協定の目的となる土地の区域(以下「景観協定区域」という。)
 良好な景観の形成のための次に掲げる事項のうち、必要なもの
  建築物の形態意匠に関する基準
  建築物の敷地、位置、規模、構造、用途又は建築設備に関する基準
  工作物の位置、規模、構造、用途又は形態意匠に関する基準
  樹林地、草地等の保全又は緑化に関する事項
  屋外広告物の表示又は屋外広告物を掲出する物件の設置に関する基準
  農用地の保全又は利用に関する事項
  その他良好な景観の形成に関する事項
 景観協定の有効期間
 景観協定に違反した場合の措置

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そもそも景観法とは?

景観法は、2004年(平成16年)に制定されました。

景観に関する法制度として、都市計画法に基づく美観地区、風致地区、伝統的建造物群保存地区といった地区計画制度や、ことにおける歴史的風土の保存に関する特別措置法といった個別の制度はあったが、景観そのものにフォーカスした制度はなく、景観法は『景観』そのものの整備・保全を目的とする日本最初の総合的な法律となっております。

景観という性質上、建築物、屋外広告物、公共施設、国立公園、都市計画等、
他の法令に関連する部分と密接にかかわってくることとなります。
具体的には、

  • 建築基準法
  • 屋外広告物法
  • 自然公園法
  • 都市公園法
  • 都市計画法
  • 文化財保護法

などの法律が関連してきます。

基本理念

基本理念は下記のような具合になります。

  • 良好な景観は国民共通の資産
  • 自然、歴史、文化、人々の生活、経済活動等との調和により形成される
  • 地域固有の特性と密接に関連することを踏まえて、地域住民の意向を踏まえて多様な形成が必要
  • 地方公共団体、事業者、住民の一体的な取り組みが必要
  • 良好な景観を保全するだけでなく、新たに創出していく

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景観行政団体と景観計画策定団体数

景観行政団体とは、景観法に基づいて設置される団体であり、景観法に基づく大部分の事務の実施主体です。
通常は都道府県、政令指定都市、中核市は基本的に自動的に景観行政団体となり、その他の市町村は都道府県と協議した場合に設置されます。

ある都道府県下の全ての市区町村が景観行政団体となった場合、その都道府県は事務を全て市区町村に移管していることとなりやることがなくなってしまうため、景観行政団体から外れることとなります。現状、下記の7県が該当します。

静岡県、山口県、香川県、愛媛県、大分県、宮崎県、鹿児島県
以上の県では、景観法令に関する事務の窓口は各市町村ということなります。

景観行政団体は景観計画を定めることができます。

令和5年3月末時点で
景観行政団体数は計806団体。市町村での割合は約44%
景観計画策定団体数は計655団体。市町村での割合は約36%

※令和6年7月27日現在
都道府県    47
政令指定都市  20
中核市     62
特別区     23
区      171
群      307
町      743
村      189
市町村合計 1724

都道府県政令指定都市中核市その他市町村
全体数472062市 690
町 743
村 189
計1642
景観行政団体402062684
景観計画策定団体222059554

景観:景観法の施行状況 – 国土交通省 (mlit.go.jp)

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罰則・過料

罰則

下記の罰則は、命じられたり依頼された場合は、行為者のみならず法人や依頼者もまた同様の罰則が適用されます。なお、各条文において罰則が規定されない例外規定もいくつかございますが、今回の記事では割愛します。

1年以下の懲役又は50万円以下の罰金

  • 景観行政団体の長の変更命令、違反建築物に対する措置への命令に従わない場合
    (17条5項、64条1項違反)

50万円以下の罰金

  • 景観行政団体の長の命令、形態意匠の制限に適合しない建築物に対する措置に従わない場合
  • 景観地区内において建築物の建築等をしようとする場合の計画の申請書を提出せず、又は虚偽の申請書を提出した場合
  • 建築計画の認定証の交付を受ける前に工事を行った場合
  • 非常災害があった場合の応急仮設建築物・工作物を工事完了後3か月を超えて存続させる場合には許可申請が必要となるが、その申請を怠った場合。

30万円以下の罰金

  • 景観計画区域内での建築物の建築、工作物の建設、開発行為の計画の届出をせず、虚偽の届出をした場合
  • 建築物、工作物のある土地への立ち入り検査・立ち入り調査を拒み、妨げ、忌避した場合
  • 立ち入り検査の報告せず、虚偽の報告をした場合
  • 届出を受理した日から一定期間(通常30日、状況に応じて増減あり)を経過した後でなければ工事できないところを、それを待たずして届出にかかる行為に着手した場合
  • 景観行政団体の長の許可なく、景観重要建造物の増築、改築等を行った場合
  • 景観行政団体の長の許可なく、景観重要樹木の伐採又は移植をした場合
  • 景観重要建造物、景観重要樹木に何らかの行為を行う際に付された条件に違反した場合。
  • 景観重要建造物の原状回復又は代替措置の命令に違反した場合
  • 景観地区内の建築物の建築等を行う際、認定があった旨等の必要事項の表示を怠った、
    又は認定を受けた計画の写しを備えておかなかった場合

条例によっては50万円以下の罰金

  • 景観地区内の工作物の形態意匠等の制限
  • 景観地区内の開発行為等の制限
  • 準景観地区内における行為の規制
  • 地区計画等の区域の形態意匠等の制限
    (地区整備計画、特定建築物地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、歴史的風致維持向上地区整備計画、沿道地区整備計画、集落地区整備計画)

過料

  • 景観重要建造物、景観重要樹木の管理に関する命令に違反した場合
    ⇒ 30万円以下の過料
  • 景観重要建造物、景観重要樹木の現状について報告を求められた際に、報告をせず、虚偽の報告をした場合
    ⇒ 20万円以下の過料
  • 景観重要建造物、景観重要樹木の所有者が変更となった際に、新たな所有者が行う届出をせず、虚偽の報告をした場合
    ⇒ 5万円以下の過料

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最後に

新たな景観をつくるのと、無視して好き勝手にやるのとではわけが違います。

建物をつくる、看板をつくる、外に向かって何かを表現するのは非常にお金がかかりますが、景観法令を無視してやってしまった場合、せっかく大金を叩いてやってみたのに結局取り壊し等ということになりかねません。

最近は割と個性的を主張するのが是となってきている世の中です。それ自体は大いに結構なことです。安全上の観点等、守らなければなければ他の人の権利や利益を害する恐れがあるものは法令で制限をかけられております。
『景観』は国民共通の財産であり、守られるべきものです。

当たり前にみえているものは、実は当たり前ではなかったりします。当たり前に見えるその裏には、みえないところでそれらを守っているものがあったり、そのために動いている方がおられます。

この記事を通して、景観について思いをはせつつ法令上大丈夫かどうか、是非一度思い立った際に行政書士等の専門家に是非相談いただければと思います。

当事務所でも、景観法令に関する適合確認に関する相談を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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