反社会的勢力(反社)とは?―総会屋・標ぼうゴロも含めた位置づけ
目次
はじめに(重要な注意)
本記事は、契約書・申請書類・表明確約書でしばしば求められる「反社会的勢力等ではないこと」に関して、国等の公的情報に基づき一般論として整理するものです。
特定の個人・団体について「反社会的勢力に該当する」と断定・認定するものではありません(該当性の判断は、捜査・情報収集等を含む高度に専門的領域であり、一般公開情報のみでの断定は適切ではありません)。
1. 「反社会的勢力」の定義は、法律に“1つ”として存在するのか?
結論から言うと、反社会的勢力の定義を一律に定めた単一の法律条文があるわけではありません。
令和元年12月10日の衆議院での答弁では、形態が多様であり社会情勢に応じて変化していくものであるため、あらかじめ限定的かつ統一的に定義することは困難、とされています。
ただ、令和元年12月13日の参議院での答弁では、以下のような内容がみられます。
当該指針においては、民間企業の対応に資するため、民間企業が関係を遮断すべき対象である「暴力団を始めとする反社会的勢力」について、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、・・・属性要件に着目するとともに、・・・行為要件にも着目することが重要である」
参議院議員熊谷裕人君提出反社会的勢力の定義に関する質問に対する答弁書
あくまで答弁の内容を見る限りではですが、以下のように整理できます。
- 反社会的勢力:暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人
- 属性要件と行為要件
- 属性要件:その人(団体)は何者か?…組織的・社会的な立場、帰属、属性
- 行為要件:その人(団体)が何をしているのか?…暴力・威力・詐欺的手法などを用いた行動様態
2. 国や自治体に「反社の指定団体リスト(名簿)」はあるのか?
ここが最も誤解されやすい点です。
2-1. 一般公開された“包括的な名簿”は存在しません
結論として、国や自治体が「反社会的勢力の団体名簿」「関係者一覧」を網羅的に一般公開しているものはありません。
(公開すれば捜査・情報収集への影響、人権・名誉の問題、状況の流動性等、重大な支障が生じ得るためです。)
2-2. ただし「指定」という制度は存在します(暴対法)
一方で、「指定」という言葉が使われる領域があります。代表例が、暴力団対策法(暴対法)です。
暴対法の体系のもとで、都道府県公安委員会による指定等の制度が運用されています。 e-Gov 法令検索
※ここで重要なのは、「指定暴力団」等の制度があっても、それが直ちに“民間が使える完全な名簿”として提供されるものではない、という点です。
3. だから実務は「表明・確約」方式になる
公開名簿がない以上、行政手続・契約実務では、次のような仕組みが採られます。
- 相手方に「反社会的勢力等ではない」ことを表明・確約してもらう
- もし虚偽が判明した場合の解除・停止等を契約条項で担保する
実際に、自治体・民間の実務でも用いられる書式は、概ね以下のような構成です。
- 暴力団、暴力団員、準構成員、関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ…等への非該当
- 資金提供・便宜供与等の関係の否定
- 暴力的要求行為等をしない旨
- 虚偽の場合の解除・賠償等
当事務所で使用している「反社会的勢力等ではないことに関する表明・確約書」も、ここに沿った形で運用しております。
4. 「総会屋」「社会運動等標ぼうゴロ」も“反社”に入るのか?
表明確約書に、「総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ」が並ぶのはなぜか――これも実務上の重要点です。
警察庁の通達(組織犯罪対策の要綱改正等)では、「社会運動等標ぼうゴロ」について、
社会運動・政治活動等を仮装・標ぼうして不正利益を求め、暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者といった趣旨で類型が整理されています。 警察庁
また、警察白書等でも、暴力団構成員・準構成員に加えて、総会屋、政治活動標ぼうゴロ、社会運動標ぼうゴロ等の類型が言及されています。
保護対策実施要綱の改正について(依命通達) 警察庁 令和6年3月28日
この通達に別添されている保護対策実施要綱では『暴力団等』について以下のように定義されています。
第2 定義
1 暴力団等
この要綱において、暴力団等とは、次のいずれかに該当する者をいう。
(1) 暴力団(その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)
が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれ
がある団体をいう。)
(2) 暴力団員(暴力団の構成員をいう。)
(3) 暴力団準構成員(暴力団又は暴力団員の一定の統制の下にあって、暴
力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがある者又は暴力団
若しくは暴力団員に対し資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持若
しくは運営に協力する者のうち暴力団員以外のものをいう。)
(4) 暴力団関係企業(暴力団員が実質的にその経営に関与している企業、
準構成員若しくは元暴力団員が実質的に経営する企業であって暴力団に
資金提供を行うなど暴力団の維持若しくは運営に積極的に協力し、若し
くは関与するもの又は業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し暴
力団の維持若しくは運営に協力している企業をいう。)
(5) 総会屋等(総会屋、会社ゴロ等企業等を対象に不正な利益を求めて暴
力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者
をいう。)
(6) 社会運動等標ぼうゴロ(社会運動又は政治活動を仮装し、又は標ぼう
して、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民
生活の安全に脅威を与える者をいう。)
(7) 特殊知能暴力集団等((1)から(6)までに掲げる者以外のものであって、
暴力団との関係を背景に、その威力を用い、又は暴力団と資金的なつな
がりを有し、構造的な不正の中核となっている集団又は個人をいう。)
(8) 匿名・流動型犯罪グループ(暴力団と同程度の明確な組織性は有しな
いものの、集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行っている集団の
ほか、SNSを通じるなどした緩やかな結び付きで離合集散を繰り返す
など、そのつながりが流動的であり、また、匿名性の高い通信手段等を
活用して特殊詐欺や強盗等の犯罪を広域的に敢行し、それによって蓄え
た資金を基に、更なる違法活動や風俗営業等の事業活動に進出するなど、
その活動実態を匿名化・秘匿化し、組織犯罪の観点から治安対策上の脅
威となっている集団をいう。
つまり、暴力団等とは、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等、匿名・流動的犯罪グループのいずれかに該当する者を言うということになります。
実務上は
「暴力団“そのもの”」に限らず、同視し得る反社会的類型(不当要求型の集団・個人)まで含めて排除する
という設計になっているため、表明確約書にこれらが列挙されます。
このため、補助金・登録制度・取引基本契約などで「反社排除」「表明・確約」が求められる場面では、上記のような考え方を踏まえた運用が一般化しています。
5. Q&A
Q1. 「反社かどうか」は、行政書士が調べて判定できますか?
A. 一般公開情報だけで「反社該当」と断定することは適切ではありません。
本記事の目的は、制度・書式・運用(表明確約の合理性)を解説することにあります。個別案件での不安がある場合は、関係機関への相談(警察の相談窓口、暴追センター等)や、契約条項の整備によるリスク低減が現実的です。
Q2. なぜ“自己申告”に見える方式が広く使われるのですか?
A. 公的な包括名簿が公開されていない以上、手続・取引の入口では、表明確約+解除条項等で「関係遮断」を担保するのが、現実的で適法性・説明可能性の高い方法だからです。
Q3. 暴排条項や表明確約書はどこまで書けばいい?
A. 目的は「排除の姿勢の明確化」と「判明時の解除等の根拠化」です。
各都道府県警察でも、暴排条項・表明確約書の活用が案内されています。 暴力団排除条項の記載例/大阪府警本部
(※業種・取引形態により推奨文言や実装方法は変わるため、雛形のコピペだけでなく、運用に合わせた調整が推奨されます。)
6. 行政書士事務所として提供できる支援
当事務所では、反社該当性を“認定”するのではなく、次のように適法かつ説明可能な形で、取引・申請のリスクを下げる支援を行います。
- 表明確約書/暴排条項の整備(業種・取引類型に合わせた条項設計)
- 申請・登録制度で求められる「反社排除要件」の整理と、提出書類の整合性チェック
- 取引開始後に問題が判明した場合に備えた解除・停止・返還等の実務フローの整理(社内手順書化)
まとめ
反社会的勢力には、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員等のいわゆる「暴力団等」に加え、総会屋、政治活動・社会運動等を標ぼうして不当な要求を行う者など、暴力団と同視し得る集団・個人が含まれます。
これらは必ずしも暴力団の構成員であるとは限りませんが、国の指針や警察の実務においては、反社会的勢力として広く排除の対象とされています。
- 反社会的勢力の「定義」は、法律に一律の条文があるというより、政府資料等で用いられる整理が実務標準
- 国や自治体が、一般向けに「反社の名簿」を網羅的に公開しているわけではありません。
- そのため、行政手続・契約実務では、表明確約+解除条項で排除を担保する方式が広く採用されています。
- 総会屋・社会運動等標ぼうゴロ等も、実務上は反社排除の文脈で類型として整理されます。

