土地を売買するときに必要な届出まとめ


― 見落としがちな届出義務を法令別に整理 ―

土地の売却は、売買契約と登記を行えば終わり、というものではありません。
土地の所在地、面積、現況(農地・森林等)、区域指定の有無によっては、

  • 契約前に必要な手続
  • 契約後に必要な手続

が複数存在します。

これらの届出・許可義務は、

  • 売主に課されるもの
  • 買主に課されるもの
  • 売主・買主双方に関係するもの

が混在しており、混同すると契約スケジュールの遅延や、法令違反リスクにつながります。

本記事では、土地売却に関連して必要となり得る届出・許可制度を、根拠法令ごとに体系的に整理します。

※本記事は一般的な制度整理を目的としたものであり、個別具体的な案件に対する法的助言を構成するものではありません。


1.公有地拡大推進法に基づく届出(公拡法)

公有地の拡大の推進に関する法律(いわゆる公拡法)は、地方公共団体等に土地の先買い機会を確保するため、一定の土地を有償で譲渡しようとする場合に、売主(譲渡人)に対し「契約締結前」の届出を求める制度です。

届出が必要となり得る典型例(要件は個別確認)

  • 都市計画施設の区域、または道路法・都市公園法・河川法等により区域指定された土地(いわゆる「都市計画施設等」)に該当する場合
  • 生産緑地地区にかかる土地を有償譲渡する場合
  • 土地区画整理事業・住宅街区整備事業の施行区域内の土地を有償譲渡する場合
  • 市街化区域内の一定規模以上の土地を有償譲渡する場合
    (原則5,000㎡以上。ただし条例で引下げられている自治体があります)
  • このほか、市街化区域外においても、一定の面積基準が設けられる類型があります(自治体により取扱いが異なるため要確認)

※公拡法は、対象区域・面積要件・除外要件が細かく整理されているため、都市計画図・条例・自治体案内等による事前確認が必須です。

届出時期と契約締結制限(重要)

  • 届出は 売買契約を締結する前 に行う必要があります
  • 届出後は、買取協議の有無に応じて
    一定期間(最大6週間)売買契約の締結が制限される仕組みがあります
    (通知により期間が短縮されることがあります)

👉 公拡法は、売却スケジュールに直接影響するため、最優先で確認すべき制度です。

また、自治体から「買い取らない旨の通知」がなされた場合、一定期間、同一の届出者による譲渡について届出が免除される運用がなされていることもあります。具体の取扱いは必ず所管自治体に確認してください。


2.国土利用計画法に基づく届出(国土法)

国土利用計画法第23条は、一定面積以上の土地取引について、買主(権利取得者)に対し「契約締結後」の届出義務を課しています。

売主に直接の届出義務はありませんが、実務では売主側も、買主が期限内に届出できるよう、契約書類や図面の準備に協力するのが一般的です。

面積要件と届出期限(原則)

  • 市街化区域:2,000㎡以上
  • 市街化区域を除く都市計画区域:5,000㎡以上
  • 都市計画区域外:10,000㎡以上

届出期限:契約締結日から2週間以内

提出窓口は都道府県が所管し、市町村経由となる場合もあります。具体の提出方法は自治体案内に従ってください。

注意点

  • 届出を怠った場合や虚偽届出は、罰則の対象となる可能性があります
  • 複数の土地をまとめて取得する計画(いわゆる「買いの一団」)では、
    個々の面積が基準未満でも届出対象となることがあります

3.重要土地等調査法に基づく届出(重要土地)

重要土地等調査法により、特別注視区域内にある一定規模以上の土地・建物について、
所有権等の移転に関する契約を締結する場合は、契約締結前に内閣府への届出が必要です。

制度のポイント(厳密)

  • 事前届出制(契約前)
  • 届出先は 内閣府(内閣総理大臣)
  • 面積要件
    • 土地:1筆ごと200㎡以上
    • 建物:1棟ごとの延べ床面積(各階合計)200㎡以上
  • 指定区域は随時更新されるため、
    売却前に必ず最新の指定状況を確認します

※対象となる権利の範囲や例外については、内閣府の最新案内で必ず確認してください。


4.農地法に基づく届出・許可(農地の売却)

売却対象地が、農地法上の「農地」または「採草放牧地」に該当する場合には、農地法に基づく許可・届出等の手続が必要になります。

農地法の対象となるかどうかは、登記簿上の地目だけで一律に決まるものではなく、現況、利用実態、周辺状況等を踏まえて判断されます。

そのため、実務上は、

  • 見た目が畑・田に見える
  • 昔は農地だった
  • 地目が雑種地・宅地になっている

といった場合でも、自己判断せず、必ず事前に農業委員会等へ確認することが安全です。

代表的な整理

  • 農地のまま売買 → 農地法3条許可
  • 転用目的で売買(市街化区域外) → 農地法5条許可
  • 転用目的で売買(市街化区域内) → 農地法5条届出

無許可・無届出のリスク

必要な許可・届出を経ずに進めると、

  • 是正指導
  • 工事停止
  • 原状回復命令
  • 罰則

などの対象となるほか、登記・融資・再売却等に重大な支障が生じます。


5.森林法に基づく届出(森林の土地の所有者届出)

地域森林計画の対象となっている民有林を取得した場合、買主は取得日から90日以内に市町村長への届出が必要となることがあります。

国土法との関係

  • 国土法の届出を行った場合、森林法の届出が不要となる整理があります
  • 国土法の対象外となる場合は、森林法の届出が必要となることがあります

6.生産緑地法に基づく買取り申出

生産緑地地区に指定された土地は、一般の宅地のように自由に売却できるとは限りません。

売却を検討する場合は、

1.生産緑地法に基づく買取り申出
2.市町村の通知
3.あっせん等の手続
4.一定条件下で行為制限解除

という流れを踏む必要があります。

注意点

  • 買取り申出が可能となる要件は、法定要件と自治体運用により整理されます
  • 公拡法との関係は制度改正・運用変更があり得るため、必ず最新の自治体案内で確認してください

7.都市計画法等による制約(売却後の利用に影響)

※以下は、土地の「売却」自体ではなく、買主が取得後に予定する建築・開発等の行為に応じて必要となる手続です。

土地の売却時点では直接義務とならない場合でも、トラブル防止の観点から把握しておくことが重要です。

代表例:

  • 地区計画区域:建築行為等の届出
  • 都市計画施設区域:建築許可
  • 市街化調整区域:建築許可
  • 開発行為:開発許可

8.不動産登記(所有権移転・相続登記)

売買により所有権が移転した場合、通常は所有権移転登記を行います。

また、相続により取得した土地を売却する場合は、売却前に相続登記が必要となります。
相続登記は義務化されており、期限内に行わない場合は過料の対象となることがあります。

表題部(どんな不動産か?)については土地家屋調査士、
権利部(誰の不動産か?)については司法書士の管轄となります。


9.税務申告上の確認事項(参考)

土地売却に関する税務では、主に以下の論点があります。

  • 譲渡所得の確定申告
  • 居住用財産の特別控除
  • 低未利用土地等の特例
  • 公拡法に基づく特例
  • 収用等の特例

適用可否は要件が複雑なため、必ず税理士・税務署で確認してください。


まとめ|土地売却前チェックリスト

  • 都市計画施設等に該当するか(公拡法)
  • 市街化区域内で一定規模以上か(公拡法)
  • 国土法の面積基準に該当するか
  • 特別注視区域に該当するか(重要土地)
  • 農地に該当するか(農地法)
  • 森林計画対象地か(森林法)
  • 生産緑地か(生産緑地法)
  • 都市計画上の制約はあるか

土地売却では、契約前に確認すべき制度が複数存在します。
これを見落とすと、契約締結自体ができなくなる場合もあります。

売却前の段階で対象地の法的状況を丁寧に整理し、所管行政庁の最新案内に基づいて判断することが、トラブル防止と円滑な取引につながります。



    現在フォームの不具合により『メッセージの送信に失敗しました。後でまたお試しください。』と表示される場合がありますが、お問い合わせ一覧にて確認できております。気になる場合はoffice-ironbird@ironbird.jpまでメールにてご連絡いただければ幸いです。
    公式LINEからでもお問い合わせが可能です。 https://lin.ee/xPoGi3d
    当事務所では、原則相談は有償対応とさせていただいております。
    なお、当事務所への営業目的の場合は事務手数料22,000円(税込)を事前にいただいてからご対応させていただきます。

    是非フォローください!