デジタルサイネージ輸入業者が日本で押さえるべき許可・登録・届出の全体像
― 輸入・販売・設置工事・運用まで一気通貫で解説 ―
海外製デジタルサイネージを日本に導入する場合、単なる「物販」では済まず、電気・電波・広告・建築・消防・表示規制と、複数の法令が段階的に関与します。
本記事では、事業の流れに沿って ①輸入 → ②販売 → ③設置工事 → ④運用 の4章構成で、必要となる許可・登録・届出を整理します。
目次
第1章|デジタルサイネージを「輸入する」段階で必要となる規制
1-1 電気用品安全法(PSE)の確認は特に“本体より電源部やケーブル”が重要
デジタルサイネージ本体が特に注意が必要な特定電気用品に該当しない場合でも、
ACアダプター・電源ユニット・電源コードが電気用品に該当するケースは非常に多く見られます。
輸入事業者は、対象となる電気用品について
- 事業開始届出(経済産業省)
- 技術基準への適合確認
- PSEマークの表示
といった義務を負います。
「海外メーカーが取得しているから大丈夫」では足りず、日本で輸入する事業者が主体的に確認・対応する必要がある点が重要です。
電気用品安全法については、下記の記事でも解説しております。
電気用品安全法に基づく届出 - 広告活用のアイアンバード行政書士事務所
1-2 電波法(技適):Wi-Fi・Bluetooth内蔵モデルは要注意
デジタルサイネージにWi-Fi、Bluetooth、携帯通信等の無線機能が搭載されている場合、電波法が適用され、技術基準適合証明(いわゆる技適)を受けた機器でなければ、日本国内で使用・販売することはできません。無線機能を使用していない場合であっても、技適未取得機器を使用可能な状態で設置することは問題となるため、輸入・販売段階での事前確認が不可欠です。
近年のデジタルサイネージは、
- Wi-Fi
- Bluetooth
- LTE / 5G通信
などの無線機能を内蔵している場合があります。
これらは電波法上の「特定無線設備」に該当し、技術基準適合証明(いわゆる技適)を受けた機器でなければ、日本国内で使用・販売できません。
輸入前に必ず
- 無線機能の有無
- 技適取得済みか(機器・型式毎)
- 型式番号が日本の公的データベースで確認できるか
をチェックする必要があります。
1-3 通関・輸入税と「他法令確認」
税関手続では、関税・消費税の納付だけでなく、
他法令(電気用品安全法・電波法など)への適合状況も確認されます。
必要な証明や表示が整っていない場合、
通関で止まり、是正や返送を求められるリスクもあります。
輸入段階での法令整理は、事業のスピードを左右します。
第2章|デジタルサイネージを「販売する」段階で注意すべき点
2-1 輸入販売は「製造者相当責任」を負う
海外メーカー製品を日本で販売する場合、
輸入事業者は実質的に国内の製造者と同等の責任を負います。
そのため、
- PSE・技適の表示管理
- 仕様・注意事項の日本語表示
- 安全性に関する説明責任
が問われます。
2-2 広告・販促時の表示規制(景品表示法)
販売段階では、製品そのものの性能表示や導入効果の説明について、
景品表示法(不当表示の禁止)が関係します。
特に注意が必要なのは、
- 実際以上の省エネ効果・集客効果の表現
- 実証データのない「必ず効果が出る」といった断定表現
輸入業者自身が広告資料やWebサイトを作成する場合、
広告媒体の提供者であると同時に表示主体にもなり得る点を意識する必要があります。
第3章|デジタルサイネージの「設置工事を請ける」場合の法規制
3-1 屋外広告物条例:デジタルサイネージも「屋外広告物」
屋外に設置され、公衆に向けて表示されるデジタルサイネージは、多くの自治体で屋外広告物条例の規制対象となります。
具体的には、
- 設置場所(地域区分)
- 大きさ・高さ・輝度
- 表示内容・点滅の有無
などについて、事前許可が必要となるケースがあります。少なくとも事前相談は行っておくべきでしょう。
3-2 屋外広告業の登録(または届出)
設置工事を「請負」として行う場合、
その事業者は屋外広告業に該当し、自治体への登録(または届出)が必要になります。
重要なのは、
- 「輸入・販売だけ」では不要
- 「設置工事を業として請ける」と登録対象
という線引きです。
デジタルサイネージ事業では、ここが見落とされがちなポイントです。
実際に施工する事業者だけが登録すればよいものではなく、委託会社(元請会社)・協力会社(下請会社)問わず必要となります。単に施工業者に販売するだけであれば不要ですが、輸入から施工、運用まで一気通貫で行う場合には登録が必要となってきます。
3-3 建築・消防(火災予防条例)
デジタルサイネージには、
- 電源設備
- 蓄電池
- 場合によってはネオン管灯設備
などが付随することがありますが、
これらについては、自治体の火災予防条例に基づく届出が必要となる場合があります。
設置工事を請ける場合は、「広告物の許可」だけでなく、消防関係の届出有無まで確認する必要があります。
以下のような例では、特に注意が必要です。
- 停電対策用バッテリー
- 太陽光発電+蓄電池+サイネージ
- 移動型+仮設型サイネージ
- 夜間点灯継続用の電源
また、一定の大きさ以上の巨大なデジタルサイネージを施工する場合は、建築基準法に基づく工作物確認が必要となってきます。建築基準法を所管する行政(地域により呼び名が異なる場合があるが建築指導課等)へ事前相談を行っておくべきでしょう。
第4章|デジタルサイネージを「運用する」段階での法的注意点
4-1 表示内容の継続的な適法管理
運用段階では、
- 広告主が差し替える広告
- 自社で配信する情報
いずれについても、不当表示・誤認表示が行われていないかを継続的に管理する必要があります。
「機器は売っただけ」「コンテンツは顧客が作っている」という場合でも、
運用代行を請けていると責任が及ぶ可能性があります。
また、屋外で展開する場合においては、屋外広告物法令はもちろんのこと、地域によってはデジタルサイネージのガイドラインが設けられている場合があり、そのあたりの注意も必要となってきます。
4-2 輝度・点滅・表示時間帯の制限
屋外広告物条例では、
- 夜間の輝度制限
- 点滅や動画表現の制限
- 表示時間帯の制限
が設けられている自治体もあります。
運用段階でこれに違反すると、是正指導や許可取消につながるため、
運用ルールの設計段階から条例を前提にすることが重要です。
4-3 クラウド型デジタルサイネージ事業を行う場合は電気通信事業者の届出も
デジタルサイネージにおいて、通信回線を用いて遠隔配信や運用管理サービスを提供する場合、その事業形態によっては電気通信事業法上の電気通信事業者に該当し、総務省への電気通信事業届出が必要となる可能性があります。単なる機器設置にとどまらず、通信を用いたサービス提供を行うか否かが判断の分かれ目となります。
デジタルサイネージ事業が電気通信事業法上の電気通信事業に該当するか否かは、通信機能の有無ではなく、通信を用いて第三者に役務を提供しているかどうかによって判断されます。特に、遠隔配信や管理サービスを有償で提供する場合には、電気通信事業の届出が必要となる可能性が高いと言えるでしょう。
まとめ|デジタルサイネージ事業は「段階別の法令整理」が不可欠
デジタルサイネージは、以下のように事業フェーズに応じて必要となりうる手続きが多岐にわたってきます。
| 事業フェーズ | 主な法令 | 必要となりうる手続き(許可・登録・届出等) |
|---|---|---|
| ① 輸入 | 電気用品安全法 | ・電気用品製造(輸入)事業者届出・適合性確認(自主検査/第三者認証)・PSEマーク表示 |
| 電波法 | ・技術基準適合証明(技適)取得済み機器の確認 | |
| 関税法・消費税法 | ・輸入申告・関税・輸入消費税の納付 | |
| ② 販売 | 電気用品安全法 | ・PSE表示の維持管理 |
| 電波法 | ・技適未取得機器の販売禁止 | |
| 景品表示法 | ・広告表示内容の適法性確保 | |
| ③ 設置工事を請ける | 屋外広告物法・屋外広告物条例 | ・屋外広告業登録(または特例申請) ・屋外広告物の表示・設置許可申請 |
| 電気工事業法 | ・一般電気工事業者の登録 建物側の電気設備に手を入れる工事を業として行う場合に必要 ※電気工事を完全に外注している場合や、コンセントに挿すだけの場合は登録不要 | |
| 建設業法 | ・建設業許可(※工事内容・金額により必要) | |
| 〈想定される工事業の種類〉 ・とび・土工・コンクリート工事業(基礎・支柱設置) ・鋼構造物工事業(鉄骨フレーム・大型架台) ・電気工事業(電源・配線・分電盤設置) ・電気通信工事業(通信回線・ネットワーク接続) ・建具工事業(壁面開口を伴う場合) | ||
| 建築基準法 | ・工作物確認申請(広告塔・広告板等に該当する場合)・軽微な附属物か否かの建築主事判断 | |
| 消防法・火災予防条例 | ・燃料電池・変電・急速充電・発電・蓄電池設備設置(変更)届出 ・ネオン管灯設備設置(変更)届出 など | |
| ④ 運用(表示・配信) | 屋外広告物条例 | ・動画・輝度・点滅・時間帯規制の遵守 |
| 景品表示法 | ・配信コンテンツの不当表示防止 | |
| 消防法・火災予防条例 | ・設備変更時の再届出 | |
| 電気通信事業法 | ・電気通信事業者の届出 |
デジタルサイネージは近年急速に普及しつつありますが、業者選定の際にも必要な許可を取得しているかどうかは確認しておく必要があります。特に、施工や運用面までサポートしている事業者のWebサイトの会社紹介で許可登録情報を掲載していない場合は、少し警戒度を上げておいたほうがよいかもしれません。
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