大阪・関西万博で使用されたデザインを使用したい場合
大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)は2025年10月に閉幕しましたが、公式キャラクター「ミャクミャク」やデザインシステムの人気は衰えず、万博のレガシー(遺産)として活用の場が広がっています。2026年4月1日には「共創デザインシステム」が利用可能となり、また一般企業・団体のノベルティ・広告利用も有償で解禁されるなど、IP利用のルールが大きく動いています。
しかし、これらの知的財産(IP)は商標法・著作権法・不正競争防止法・意匠法等の各種法令により厳格に保護されており、無断使用には法的リスクが伴います。本記事では、万博IPを正しく利用するための制度の全体像を、行政書士の視点から整理します。
万博IPとは何か――保護の対象となる知的財産
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(以下「協会」)が保有する知的財産は、大きく以下の4つに分類されます。
① 公式ロゴマーク 「いのちの輝き」をテーマに赤い球体をつなげたデザインで、商標登録・意匠登録がなされています。
② 公式キャラクター「ミャクミャク」 細胞と水がひとつになったふしぎな生き物。名称「ミャクミャク(MYAKU-MYAKU)」は商標登録第6651183号・第6738004号として登録され、形状も意匠登録されています。
③ デザインシステム(EXPO 2025 Design System) 個のいのちを表す「ID」(通称:こみゃく)、共同体を意味する「GROUP」、生態系を表現する「WORLD」の3つのデザインエレメントで構成されるビジュアルシステムです。
④ 呼称 「2025年日本国際博覧会」「大阪・関西万博」「EXPO 2025」等の名称も保護対象です。
利用類型ごとの許可申請・手続きの全体像
万博IPの利用形態は、目的や利用者の属性に応じて複数のルートに分かれます。以下、2026年4月時点の制度を整理します。
1. 商品の製造・販売(ライセンシングプログラム)
万博IPを商品(グッズ等)に使用して製造・販売する場合は、「EXPO2025ライセンシングプログラム」に基づくライセンス契約が必要です。
窓口は「2025大阪・関西万博マスターライセンスオフィス(2025MLO)」で、所定の「IP使用問い合わせ書式」をダウンロード・記入のうえ、メールで提出します。審査を経てサブライセンス契約を締結し、デザイン案の提出・承認を経てはじめて製造が可能となります。
なお、個人からの申請は受け付けられず、企業・団体・法人が対象です。
申請の流れ(概要): IP使用問い合わせ書式の提出 → 審査・契約条件の協議 → ライセンス契約締結 → デザイン案提出・協会承認 → 製造・販売開始
2025大阪・関西万博マスターライセンスオフィス(2025MLO)
2. ノベルティ・広告・自社使用品としての利用(2026年4月~拡大)
万博閉幕までは、ノベルティや宣伝広告へのIP利用は出展者(公式参加者)や協賛企業などに限られていました。しかし、2026年4月以降、一般企業・団体にも有償で利用が拡大されました。
この利用も2025MLOが窓口となります。使用期限は2028年3月31日までとされています。
利用可能な範囲としては、景品・頒布品への使用、広告媒体・販促媒体(自社Webサイト・SNSアカウントを含む)への使用などが想定されます。ただし、デザインの使用にあたっては協会のガイドラインに適合したデザイン案を提出し、承認を受ける必要があります。
3. 関係団体による使用
協会理事団体、後援名義取得団体、自治体、出展者など、協会が定める「関係団体」に該当する場合は、専用の使用規約に基づく手続きが用意されています。
関係団体が使用する場合も、デザイン案を協会に提出し、ガイドラインへの適合確認を経て承認を受ける必要があります。無償でIP利用が可能ですが、使用許諾は非独占的であり、使用条件を遵守する義務があります。
4. 公式キャラクター「ミャクミャク」の二次創作
協会は2022年8月30日に「大阪・関西万博公式キャラクター二次創作ガイドライン」を策定し、個人による非営利・私的利用の範囲での二次創作を許容しています。
許諾される使用例:
- 非営利で個人的に楽しむための作品制作(絵画、デジタル画像、ぬいぐるみ、衣装等)
- 作成した二次創作物の画像・動画を個人のSNSやブログに投稿すること
許諾されない使用例:
- 営利目的での販売・配布・宣伝(同人誌即売会での販売も該当する可能性あり)
- 企業や事業の宣伝広告・販売促進への使用
- 協会との特別な関係があるかのような表示
許諾の対象は「個人または法人格のない団体」に限定されます。企業・法人格のある団体が利用する場合は個別の問い合わせが必要です。
なお、二次創作物を公衆送信した場合、協会がその作品を無償で複製・公衆送信等して紹介する権利を有するとされている点にも留意が必要です。
5. デザインシステム「ID」(こみゃく)の二次創作【2026年3月30日~】
2026年3月30日、デザインシステムの「ID」エレメント(通称「こみゃく」)についても、新たに二次創作ガイドラインが策定されました。
ミャクミャクの二次創作ガイドラインと同様、著作権法第30条第1項に定める個人(法人格のない団体を含む)による私的使用の範囲内でのみ適用され、営利目的のグッズ販売・配布・宣伝広告等への使用は認められません。
対象は「ID」エレメントのみであり、「GROUP」「WORLD」エレメントについてはこの二次創作ガイドラインの対象外です。
6. 共創デザインシステムの利用【2026年4月1日~】
万博のレガシー継承を目的として、2026年4月1日から「共創デザインシステム(EXPO 2025 Co-Creation Design System)」が個人・法人を問わず無償で利用可能となりました。
利用可能な範囲:
- 個人での使用
- 企業・団体等による内部での使用
- 大阪・関西万博の理念継承・発展を目的とした掲示物・発行物等への使用
利用できない範囲:
- 商品やサービスに関連付けた使用
利用にあたっては協会の公式サイト上の申請フォームから所定の手続きを行い、協会および2025MLOの承認を得る必要があります。審査には通常10営業日程度を要し、申請内容によって前後する場合があります。使用期限は2028年3月31日までの予定です。
7. メッセージ付きロゴマークの使用
公式ロゴマークに独自のメッセージを組み合わせて使用する仕組みも用意されています。協会が開設した専用のWeb申請サイトから申請し、ガイドラインと確認事項に同意のうえ利用する形式です。
行政書士の視点から見た実務上の注意点
① 利用目的の正確な特定が不可欠
万博IPの利用にあたっては、「何を」「誰が」「何の目的で」「どのように」使うのかを明確にすることが出発点です。同じミャクミャクの利用であっても、個人が趣味でファンアートを描く場合と、法人が販促ツールに使用する場合とでは、適用されるルールも手続きもまったく異なります。
利用目的が曖昧なまま制作に着手してしまうと、後から不適切な利用として差止めを求められるリスクがあります。
② 不承認事由への該当に注意
協会が使用を承認しない場合として、以下のような事由が規約上定められています。
- 万博の成功に資すると認められない場合
- 使用目的が明らかでない場合
- 環境保護やSDGsの観点から相当でないと認められる場合
- 政治・思想・宗教等の活動目的に利用されるおそれがある場合
- 不当な利益を上げるために利用されるおそれがある場合
- 法令又は公序良俗に反するおそれがある場合
これらの事由に該当しないよう、申請書類の段階から利用目的を丁寧に記載することが重要です。
③ デザイン案の事前承認は省略できない
ライセンスプログラムでも関係団体による使用でも、IPを使用するデザイン案を協会に提出し、ガイドラインへの適合を確認してもらう手順が必須です。承認前に制作・配布してしまうことは、たとえ正規のライセンス契約を結んでいても規約違反となり得ます。
④ 著作権表示(©Expo 2025)の必須記載
IPを使用する制作物には、著作権の所有者を示す「©Expo 2025」の表示が求められます。小さな販促物であっても、商品タグやラベル、パッケージ等に必ず記載が必要です。
⑤ 二次創作ガイドラインの「個人」の範囲に注意
ミャクミャクおよびこみゃくの二次創作が許容されるのは「個人または法人格のない団体」に限定されます。法人(株式会社・合同会社・NPO法人等)が二次創作ガイドラインの範囲で利用することはできず、個別に協会窓口への相談が必要です。
個人事業主がビジネスの宣伝目的で使用する場合も、「営利目的」に該当し、二次創作ガイドラインの適用外となる可能性が高い点にご留意ください。
⑥ 使用期限の管理
多くの利用許諾は2028年3月31日を使用期限としています。期限到来後の継続利用については、協会の方針次第で変更があり得ます。期限管理を怠り、期限超過後も使用を継続してしまうことがないよう注意が必要です。
想定される質問(FAQ)
Q1. 自社の地域イベントでミャクミャクのイラストを使ったチラシを作りたい。どの手続きが必要?
法人・団体が広告宣伝目的で使用する場合は、2025MLOを通じた有償のIP使用申請が必要です。二次創作ガイドラインは個人の非営利利用に限られるため、団体の宣伝目的利用には適用されません。
Q2. 個人のハンドメイド作家として、こみゃく風のアクセサリーを作ってフリマアプリで販売したい。
営利目的での販売は二次創作ガイドラインの適用範囲外です。有償での販売はもちろん、無償での配布(頒布)も許諾されていません。販売を希望する場合は、ライセンスプログラムへの申請が必要となります。
Q3. 共創デザインシステムを使って自社の環境報告書の表紙をデザインしたい。
万博の理念継承を目的とした掲示物・発行物への使用であれば共創デザインシステムの利用範囲に該当し得ますが、自社の商品・サービスに関連付けた使用は不可です。具体的な利用可否は申請フォームから手続きを行い、協会の承認を得てご確認ください。
Q4. 閉幕から時間が経てば自由に使えるようになる?
万博IPの知的財産権(商標権・著作権等)は、万博の開催期間にかかわらず法律上の保護期間内は存続します。閉幕後も無断使用は権利侵害に該当し得ます。
まとめ
大阪・関西万博のIPは、単なるイベントのロゴやキャラクターではなく、商標法・著作権法・意匠法・不正競争防止法による重層的な保護を受けた知的財産です。2026年4月以降、共創デザインシステムの無償公開や一般企業の商用利用解禁により、利用機会は大きく広がりましたが、それぞれのルートに応じた正しい手続きを踏むことが不可欠です。
参照先(公式情報源):
- 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 公式Webサイト https://www.expo2025.or.jp/
- 大阪・関西万博の知的財産に関するご注意 https://www.expo2025.or.jp/news/news-20230428-02/
- 2025大阪・関西万博マスターライセンスオフィス(2025MLO) https://expo2025mlo.jp/
- 公式キャラクター二次創作ガイドライン https://www.expo2025.or.jp/overview/character/
- デザインシステム「ID」二次創作ガイドライン(2026年3月30日制定) https://www.expo2025.or.jp/news/news-20260330-01/
- 共創デザインシステム利用申請 https://www.expo2025.or.jp/news/news-20260330-01-2/
※本記事は2026年4月時点の公開情報に基づく一般的な解説であり、個別の利用可否を保証するものではありません。具体的な利用にあたっては、必ず協会の最新の公式情報をご確認のうえ、必要な申請手続きをお取りください。

