滞在快適性等向上区域(まちなかウォーカブル)

まえがき

まちづくりに携わりたければ、行政で働くか、あるいは政治への道を志して選挙に立候補して議員にならなければできないのか?

必ずしもそんなことはなく、実はさまざまな立場から参画することができる制度があったりします。

今回ご紹介する制度は、ひらたくいえば官民一体で歩きたくなるようなエリアをつくりましょうという制度です。

国または地方公共団体が設置者となっている『都市公園』も対象エリアに含むことができる点が特徴です。

制度概要

まちなかウォーカブルとは、都市の魅力を向上させ、まちなかににぎわいを創出するための取り組みです。具体的には、車中心から人中心の空間へと転換を図ることを目指しています。

この取り組みは、人口減少や少子高齢化が進み、商店街のシャッター街化などによる地域の活力の低下が懸念される中で、多くの都市に共通して求められています。そのため、「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(令和2年法律第43号)」により、市町村が、まちなかにおける交流・滞在空間の創出に向けた官民の取組をまちづくり計画に位置付けることができるようになりました。

まちなかウォーカブル推進事業は、都市再生整備計画の区域内における滞在の快適性及び魅力の向上を図るために、道路や公園等の整備を行う一定のエリアで実施する事業です。具体的には、道路・公園・広場等の整備や修復・利活用、滞在環境の向上に資する取組を重点的・一体的に支援し、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりを推進する事業として、国土交通省が令和2年度に創設しました。

また、まちなかウォーカブル推進事業は、民間事業者等(土地所有者等)が、市町村による道路、公園等の公共施設の整備等と併せて民地のオープンスペース化や建物低層部のオープン化を行った場合に、固定資産税・都市計画税の軽減措置を講じます。

令和5年10月末時点で、滞在快適性等向上区域の設定実績は全国で117件と、まだまだ余地のある制度となっております。

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制度導入の際に配慮すべきポイント

1, 必要に応じて関係団体等の意見を聴くなど、周辺住民への十分な配慮
2,地域公共交通計画との連携
3, 関係する公共施設管理者・都道府県公安委員会との事前の連絡調整や連携
4,大規模小規模問わず地域の実情に応じた取組の選択
5,地域の伝統・文化等資源の活用検討など特性に応じたまちづくりの推進
6,オープンカフェ設置等含めた、にぎわい創出のためのソフトの取組との併用
7、市町村内の観光・福祉・交通部局などとの必要に応じた庁内連携
8、歩行者利便増進道路(ほこみち)制度の活用の検討
9,新型コロナウィルス感染拡大を予防する「新しい生活様式」の定着に対応するための活用の検討

まとめると、下記の二点に集約されます。

  • 地域における官民の関係者とのビジョンの共有
  • 施設や交通や伝統等の地域実態を勘案した交流・滞在空間の形成

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エリアプラットフォームとは?

ひらたくいえば、官民連携の枠組みです。協議会等の形式で運営されることとなります。
構成者と参画・支援者が必要です。

構成者

  • 市町村
  • まちづくり推進を図る活動を行うことを目的とする、又は活動に関心をもつ団体の主要人物

都市再生推進法人、まちづくり会社、都市開発事業者、市街地再開発組合、中心市街地整備機構、
自治会、商工会議所、商店街振興組合、社会福祉法人、青年会議所、まちづくり団体等を想定

参画・支援者

  • エリアの価値向上に寄与、優れたまちづくり活動実績のある者

中間支援組織(行政と民間をつなぐ専門性を有する組織等)に所属する者

必要に応じて加えることができる者

国の省庁や委員会、電車バス等の公共交通機関の事業者、UR(都市再生機構)、金融機関、公共施設の指定管理者等

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制度内で利用できる制度

一体型ウォーカブル事業(一体型滞在快適性等向上事業)

車道の一部広場化や店舗軒先のオープンスペース化を促進する制度です。

店舗の敷地外は一般的には道路となりますので通常違法な占用となりますが、官民一体となって合法的に道路の一部も活用して居心地がよく歩きたくなる空間を形成し、まちの魅力を向上させることができます。

事業になるので、事業を行う者が必要となります。
固定資産税・都市計画税の軽減措置や予算支援制度が活用できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
詳細は後述します。

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都市公園法の特例

  • 看板等設置に係る都市公園の占用許可の特例
    ⇒ 通常民間主体で都市公園内に看板や広告塔を設置することは認められていませんが、
    一体型ウォーカブル事業の実施主体では可能となります。
  • 公園施設の設置管理許可の特例
    ⇒ 都市再生整備計画に都市公園内のカフェや交流スペース等の公園施設の設置に関する事項を盛り込んだ場合、
    計画の記載から2年以内であれば、公園内への施設設置管理許可を受けることができます。
  • 公園施設設置管理協定制度(都市公園リノベーション協定)
    ⇒ 公園内の飲食店や売店、収益で周辺整備を行う旨の都市公園管理者と協定を結ぶことができます。
    公園内に設置するカフェや売店等の建蔽率の上限緩和等の特例措置を受けることができます。

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駐車場法の特例等

交流・滞在空間として重要な道路を『駐車場出入口制限道路』として指定することで、駐車場の出入り口を制限したり、周縁部に駐車場を集約して、歩きたくなる道や区域への自動車の流入を抑制できます。

普通財産の活用

官民がもつ様々な既存の施設や財産をまちづくり会社等に安価で貸し付けるなどして、既存の財産を有効活用することができます。

景観計画の提案

通常景観計画は都道府県や市町村といった地方公共団体が国土交通省のガイドラインに準拠しつつ、地域特性を踏まえて策定することとなりますが、民間の側からも提案することができます。

都市利便増進協定

地域のまちづくりのルールを地域住民などが自主的に定めるための協定制度です。

占用許可と組み合わせて活用することにより、公共空間を活用することで得られた収益を公共空間への維持管理に還元していく流れを構築・運用することができます。具体例でいえば、道路占用許可特例を活用して広告展開を行い、その収益配分を都市利便増進協定で定める、といった運用方法が挙げられます。

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予算支援・税制優遇の制度

官民連携まちなか再生推進事業

ひらたくいえば、事業を後押しする補助金制度です。

対象となる補助事業一覧

  1. エリアプラットフォームの構築
    ※準備段階においては地方公共団体のみ対象
  2. 未来ビジョン等の策定
    ⇒ 調査、分析、専門人材活用、意識啓発活動・勉強会等
  3. プロモーション・情報発信
    ⇒ Web作成、セミナー開催、専門人材活用
  4. 社会実験とデータ活用
    ⇒ 都市の魅力向上、国際競争力強化のための実験にかかる費用
  5. 地域交流創造施設
    ⇒ 滞在快適性等向上区域、低未利用土地権利設定等促進計画・協定、立地誘導促進施設協定のみ
    ⇒ コワーキングスペースや交流施設を想定
  6. 国際交流創造施設
    ⇒ 特定都市再生緊急整備地域、都市再生緊急整備地域(中枢中核市のみ)
  7. 国際競争力を強化する拠点づくり
    ⇒ 国際競争力強化拠点形成計画への記載が必要
    ⇒ 他都市との連携を含む連携ビジョン等の策定、情報発信、社会実験、起業支援・人材育成
  8. 地方都市イノベーション拠点
    ⇒ 地方都市イノベーション拠点形成計画への記載が必要
    ⇒ 他都市との連携を含む連携ビジョン等の策定、情報発信、社会実験、起業支援・人材育成
    ⇒ 東京23区、大阪市、名古屋市の旧市街地は対象外

    ここまでは、エリアプラットフォーム(官民一体の協議会等)のみ補助対象だが、
    下記の普及啓発事業のみ都市再生推進法人・民間事業者が応募可能
  9. 普及啓発事業
    ⇒ まちづくり課題に対し、様々な関係者を巻き込んだワークショップの開催
    ⇒ 継続性のある活動を実践する人材育成の仕組みの構築・運営にかかる経費

募集期間は12月~1月頃となっております。

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まとめ

まちづくりに参画する方法は実はこういった方法もある、という点をご理解いただければ幸いです。
まちを形作るのは皆さん一人一人です。小さなことからでも地道に動いていく。これがとても大切です。
どのように動けばよいのかわからない、といった方からのご相談もお待ちしております。

参考リンク

官民連携まちづくりポータルサイト|制度の紹介 (mlit.go.jp)

都市再生推進法人 | アイアンバード行政書士事務所 (ironbird.jp)

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