蜂蜜ビジネスを始める前に知っておきたい5つの制度枠組み

大阪・関西万博でも密かに人気を博していた蜂蜜。実際にハチミツそのものが販売されていただけでなく関連商品が販売されていたり、ミツバチや養蜂についての展示も随所でみることができました。世界中で製造されているだけでなく、私の地元である大阪府内でも、なんなら梅田でも都市養蜂が行われている等、蜂蜜の生産は意外と身近な所で行われていたりします。

蜂蜜は「自然の恵み」として高い関心を集める一方、養蜂・製造・販売・輸入・輸出といったビジネス領域では、実は複数の法制度・手続き・表示義務・検査ルールが絡み合っています。
特に「自分で採って加工したい」「販売チャネルを広げたい」「海外から原料あるいは完成品を輸出入したい」といった方にとっては、手続き漏れ・表示ミス・海外規制対応などが思わぬリスクになり得ます。
今回の記事では、「①養蜂」「②製造」「③販売」「④輸入」「⑤輸出」という5つの領域ごとに、押さえておきたい制度の大枠を簡単に整理します。行政書士として、手続き代行・制度把握・表示対応支援も可能ですので、ぜひご一読ください。

なお、大枠を紹介する観点から、建築士や通関士等他の専門家の領域についても一部言及がございます。

蜂蜜に関する規制の大別

一口に蜂蜜といっても、段階に応じてさまざまな規制をクリアする必要があります。

大別すると以下のような具合となります。

  • 養蜂に関する規制
  • 製造・加工に関する規制
  • 販売(製品表示・広告)に関する規制
  • 輸入に関する規制
  • 輸出に関する規制

共通して重要となってくるのが、『品質管理』『製品表示』でしょう。

1,養蜂に関する規制

蜂を飼育し、蜜を採取する段階では、まず「養蜂振興法」が基礎法令となります。
この法律により、蜜蜂を飼う人(養蜂者)は、都道府県知事への届出が義務づけられています(同法第3条)。
また、他の地域へ蜂群を移動させる「転飼」を行う場合には、事前の許可または届出が必要です。
これは、蜂の病気(腐蛆病など)のまん延を防ぐための防疫措置です。
(参考:農林水産省「蜜蜂に関する届出」maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/sonota/bee.html

また、設置場所の環境・周囲の安全確保・蜜源植物との距離など、地方自治体の条例や要綱で細かい規定がある場合もあります。

区分内容根拠法令・所管届出先・担当部署主な書類・要件
養蜂の開始蜜蜂を飼育する者は届出義務養蜂振興法第3条各都道府県(畜産課・農政課など)養蜂届出書(飼育場所、巣箱数、飼養者氏名)
転飼(蜂群移動)他都道府県への蜂群移動には許可または届出同法第5条移動先都道府県転飼届・許可申請書(移動計画・移動先図)
伝染病防疫蜂群に病気が発生した場合の届出義務家畜伝染病予防法都道府県畜産担当課発生届出書(症状・発生日・対応)
補助・支援養蜂振興・地域ブランド化支援各都道府県要綱県庁/市町村養蜂設備導入・環境保全・体験交流補助金など

🟢 行政書士による支援例

  • 養蜂届出書の作成・提出代理
  • 転飼(蜂群移動)許可申請のサポート
  • 養蜂場設置に関する地権者同意書や位置図の作成
  • 養蜂業に関する補助金・地域資源活用事業の情報提供

📎 参照リンク

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2,製造・加工に関する規制

採取した蜂蜜を「瓶詰め」して販売可能な製品とするには、食品衛生法上の手続きが必要となる場合があります。
蜂蜜を単に採取して出荷するだけなら農産物扱いとされることもありますが、自ら加熱処理・濾過・充填などを行う場合は、「食品等事業者」として保健所への営業届出が求められます。施設設計部分については、建築士との連携も必要となってきます。

また、2021年の制度改正により、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務化されました。
蜂蜜の瓶詰め工程では、異物混入防止・温度管理・容器洗浄などの記録体制を整えることが推奨されています。
(参考:奈良県「はちみつの瓶詰め等の製造におけるHACCP導入」pref.nara.jp/item/251189.htm

さらに、蜂蜜の「製造」に関しては、採蜜・瓶詰めなどの一次処理に加えて、
「加工(=蜂蜜を原材料として他の食品を製造する行為)」が法的には別の規制体系に入ります。

たとえば「蜂蜜入りドリンク」「蜂蜜レモン」「蜂蜜バター」などの製造は、
食品衛生法上の営業許可業種(菓子製造業、清涼飲料水製造業など)に該当し、単なる瓶詰めより厳格な衛生管理が求められます。

「蜂蜜を使った加工食品」を製造する際は、原料(蜂蜜)と製造品(加工食品)で許可制度が別建てになります。
加工食品の「許可業種」は都道府県条例により異なるため、事前に所轄保健所へ確認が必要です。
加工の規模が小さい場合でも、家庭的営業(いわゆる「自家製」)で販売する場合は同様の衛生基準が適用される点に注意が必要です。

区分内容根拠法令・所管届出先・担当部署主な書類・要件・留意点
採蜜・瓶詰め採取した蜂蜜をそのまま容器に詰める場合でも、営業届出が必要な自治体あり食品衛生法 第55条(厚生労働省・保健所)保健所(市区町村)営業届出書、施設図面、工程表※都道府県条例により要件差あり
食品衛生責任者食品等事業者には専任が義務付けられる同法 第50条保健所食品衛生責任者講習修了証の写し
HACCP(衛生管理)全ての食品等事業者にHACCPに基づく衛生管理が義務化(2021年~)同法 第50条の2保健所衛生管理計画書・記録簿の整備
品質規格「はちみつ類の規格指導要領」に基づき品質を保持(水分、ジアスターゼ活性など)日本養蜂協会「国産天然はちみつ規格指導要領」一般社団法人 日本養蜂協会自主検査・分析書(任意)
加工(蜂蜜を原材料に使用)蜂蜜を使用して「菓子」「飲料」「パン」「調味料」などを製造する場合、別途許可業種に該当食品衛生法 第52条(営業許可制)保健所(市区町村)対象業種の営業許可申請:・菓子製造業・清涼飲料水製造業・パン製造業・調味料製造業 など施設基準(区画・手洗い・設備・温度管理)を満たす必要あり
加工品の表示加工後は「名称」「原材料名」「内容量」「製造者」など食品表示法の適用対象食品表示法消費者庁商品仕様書・表示原稿。原材料配合順に「蜂蜜」を記載する。
許可・届出の相違採蜜・瓶詰め=営業届出制(許可不要)/加工食品製造=営業許可制食品衛生法(2021年改正後体系)保健所届出制(低リスク業種)と許可制(高リスク業種)の違いに留意

🟢 行政書士による支援例

  • 食品営業届出書の作成・保健所対応
  • HACCP対応マニュアル(簡易型)作成
  • 製造施設の図面・工程表の整理
  • 衛生管理体制(責任者・記録様式)構築支援

📎 参照リンク

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3, 販売に関する規制

蜂蜜を販売する場合には、製造段階に加え、表示・公正競争規約の遵守が必要です。
全国はちみつ公正取引協議会が定める「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」では、以下のような内容が義務づけられています。(参考:honeykoutori.or.jp/rule

  • 名称(はちみつ/精製はちみつ/巣はちみつ など)
  • 原材料名
  • 原産国名
  • 内容量、賞味期限、保存方法
  • 製造者・販売者の氏名又は名称・所在地
  • 「はちみつは一歳未満の乳児には与えないでください」の表示

また、「国産」「天然」などの表現は、基準を満たさない場合に景品表示法違反(不当表示)に該当することもあります。
(参考:消費者庁「景品表示法」caa.go.jp

さらに、医薬品的な効能を謳う広告は薬機法の規制を受ける点にも留意が必要です。

区分内容根拠法令・所管届出先・担当部署主な書類・要件・留意点
食品表示名称・原材料・原産地・賞味期限・保存方法・製造者等を明示食品表示法/JAS法(消費者庁)消費者庁または自治体表示内容がJAS規格・食品表示基準に準拠していること(誤認表示禁止)
公正競争規約「天然」「国産」「純粋」等の用語制限はちみつ類の表示に関する公正競争規約(全国はちみつ公正取引協議会)同協議会(任意加入)不当景品類及び不当表示防止法に基づく自主ルール。認証ラベル使用には登録が必要。
景品表示法実際より優良・有利と誤認させる表示禁止景品表示法(消費者庁)消費者庁・都道府県「薬効」「万能」「○○に効く」等の誇大表示禁止。行政指導・課徴金対象。
薬機法(旧薬事法)食品である蜂蜜に医薬品的効能(治療・予防・改善等)をうたう広告は禁止医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)(厚生労働省)都道府県薬務課/厚生労働省医薬・生活衛生局以下のような表現は禁止:・「咳が治る」「免疫力を高める」「糖尿病に効く」など・具体的症状の改善を示唆する文言(画像・口コミ含む)健康補助食品・機能性表示食品として販売する場合は、科学的根拠資料と消費者庁への届出が必要(機能性表示食品制度)。
販売形態別対応店舗販売・EC販売・催事販売などに応じた衛生・法令対応食品衛生法/特定商取引法保健所・経済産業局食品営業届出・食品衛生責任者設置・特定商取引法に基づく表示義務(通信販売時)

蜂蜜販売に関する規制体系を簡単にまとめると

  • 食品表示法・JAS法 … 基本的な食品情報表示
  • 公正競争規約(自主規制)… 用語・品質表示の適正化
  • 景品表示法 …誇大広告・優良誤認防止
  • 薬機法 … 医薬的効能表現の禁止

🟢 行政書士による支援例

  • ラベル・広告文言の法令チェック(表示審査)
  • 表示ラベル原稿の作成支援
  • 店舗営業・通信販売の届出(保健所・特定商取引法表示)支援

📎 参照リンク

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④ 輸入に関する規制

海外産の蜂蜜を輸入して国内販売する場合、食品衛生法に基づく輸入届出が必要です。
輸入者は厚生労働省に「食品等輸入届出書」を提出し、成分分析・残留農薬・抗生物質等の基準を満たしているかの確認を受けます。
(参考:輸入食品監視業務 |厚生労働省

また、原料状態によっては動物検疫・植物検疫の対象になることもあります。
(参考:JETRO「はちみつの輸入に関するQ&A」jetro.go.jp/world/qa/04M-010972.html

関税率・原産地証明・EPA協定の有無など、通関上の要件も要確認です。
なお、税関提出、輸入申告等の部分は通関士専業業務となります。
(参考:税関「はちみつの関税分類」customs.go.jp

🟢 行政書士による支援例

  • 食品等輸入届出書・検査書類の作成支援
  • 輸入元との契約文書(日英併記)作成
  • 通関前チェックリスト(衛生証明・分析証明)作成

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⑤ 輸出に関する規制

日本産の蜂蜜を海外に輸出する場合、輸出先国の衛生・検査・認定制度への適合が求められます。
特にEUでは、「日本のはちみつ製造施設が未認定のため輸出できない」など、非常に細かい規制があります。

また、中国・韓国向けでは、輸出企業の登録・衛生証明の取得が必要とされるケースがあります。
(参考:日本養蜂協会「中国向け輸出時の登録制度」beekeeping.or.jp

区分内容根拠法令・所管届出先・担当部署主な書類・要件
輸出認定施設EU・中国など向けでは、認定製造施設登録が必要各国の衛生規制/農林水産省農林水産省 食品産業環境課施設登録申請書、衛生管理記録
輸出検査・証明衛生証明書の取得(輸出先国が要求)家畜伝染病予防法等動物検疫所輸出検査申請書、証明書交付申請書
ラベル・原産地表示輸出先国の食品表示制度に準拠現地法(例:EU規則No.1169/2011)輸出先国当局英語・中国語等ラベル案、原材料証明
輸出契約通関書類、商業インボイス、契約書外為法/関税法税関・商工会議所輸出許可書、契約書、原産地証明書

🟢 行政書士による支援例

  • 輸出国の衛生・認定要件調査
  • 原材料トレーサビリティ体制の整備
  • 輸出用製品ラベル(英語・中国語版)作成支援
  • 貿易契約書(輸出入取引基本契約書)作成

📎 参照リンク

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他の士業等の専門家との関係

行政書士として、行政手続き・手続きに付随する書類作成支援部分でご支援可能ですが、
一部領域については、他の士業等の専門家との連携が必要となります。

分野行政書士の取扱い可否他士業との関係
養蜂◎養蜂そのものの行政手続きは
行政書士範囲
不動産については宅建士、司法書士、土地家屋調査士等が関与の可能性
製造◎行政手続部分は 行政書士範囲
(施設設計部分は建築士)
建築士
販売◎ 行政書士範囲
(広告表現は任意だが当事務所でも対応可)
輸入○ 届出・検査書類は対応可、通関は不可 通関士
輸出○ 証明・登録は対応可、通関は不可 通関士
税務関係× 税理士範囲税理士

その他、養蜂に限った話ではありませんが、契約紛争・損害賠償請求については弁護士の領域となります。


■ おわりに

蜂蜜ビジネスは、「自然」「健康」「地域資源」「国際流通」といった複数の価値軸を持つ魅力的な分野です。
しかし同時に、養蜂から輸出までの各段階で、届出・許可・表示・検査などの行政的要件を適切に満たすことが欠かせません。地域や用途により、注意すべきポイントが多岐にわたるため、書類作成以前の調査部分が極めて重要です。

アイアンバード行政書士事務所では、各段階で必要となる手続きをサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。

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