プロジェクションマッピングを行う際の行政手続き等の注意点

デジタルサイネージ同様、近年注目されつつあるプロジェクションマッピング。
プロジェクションマッピングは無体物であるため、従来の有体広告物を基本とした屋外広告物条例ガイドラインには馴染まない部分もあります。こうした状況を踏まえ、国土交通省では平成30年に投影広告物条例ガイドライン、並びにプロジェクションマッピング実施マニュアルが策定されました。

おおまかな注意点

建物・土地の所有者や管理者に事前に相談

  • 言わずもがなですが、どこでやるにせよ行政・民間問わず建物・土地の所有者や管理者に事前に相談し、許可をとっておくのが基本です。
  • 相談窓口は、屋外広告物条例が施工されている地域では該当の市町村、それ以外は都道府県となります。
  • テーマパークや公園等の敷地内でその来訪者に向けて表示されるものについては、屋外広告物法に基づく手続きは不要です。ただし、公園の場合は、都市公園法等の法令に留意し、事実上管理者の事前相談が必要と言えるでしょう。(そもそもプロジェクションマッピングは大掛かりなものになり、実施場所への事前相談等は通常必要になってくるでしょう)
  • 屋外で実施する場合でも、公益性があり期間限定で行われる場合は、屋外広告物条例の許可が不要な場合があります。(ただし管理者等への事前相談が必要であり、事実上許可は必要)

道路・河川を挟んで向かいの建物等に表示する場合に想定される手続き

道路が関係してくる場合

道路をまたぐなど、道路付近でプロジェクションマッピングを行う場合は、
警察へ事前相談を行います。

道路交通法等により、道路における禁止行為が定められているため、それらに抵触しないよう留意が必要です。

  • 信号機又は道路標識などの効用を妨げるような工作物又は物件を設置すること
  • 車両の運転者の目を幻惑するような光をみだりに道路上に投射すること

といった具合に、安全に関わる点に抵触しないように留意する必要がある。

道路を使用する者の安全に影響がない場合、例えば高所から高所へ表示するといった形であれば、実施自体は可能です。また道路にはみ出さないように投影機を設置し、道路を挟んだ向かいの建物等に投影する場合は、道路管理者への手続きは必要ありません。

しかしながら場合によっては、道路使用許可が必要となる場合があります。
いずれにせよ、該当の警察署にも事前相談しておくことが望ましいでしょう。

河川が関係する場合

河川敷でイベント等を実施する際は、国土交通省管轄の河川事務所へ事前相談を行います。

なお、河川を挟んで向かいの建物等に表示する場合、河川の区域にはみ出さないように投影機を設置し、河川を挟んだ向かいの建物等へプロジェクションマッピングを行う場合は、河川管理者への特段の手続きなしで行うことが可能です。

文化財保護法に規定された建造物周辺で実施する場合

文化財保護法に規定された建造物周辺で実施する場合、『現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為』に該当し、文化財保護法に基づく許可・届出が必要となってきます。

第43条1項、2項(重要文化財現状変更等の制限)
第81条1項(重要有形民俗文化財の保護)
第125条1項(史跡名勝天然記念物の現状変更等の制限及び原状回復の命令)
第184条1項第2号(都道府県又は市の教育委員会が処理する事務における現状変更等の制限)

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投影広告物条例ガイドライン

条例の趣旨

屋外広告物条例同様、地域特性によっていろいろと変わる部分があるため、国で統一したガイドラインを策定して、これをベースにして地域に応じて個別の事情を踏まえて修正を加える形となっております。

ガイドラインでは、下記の3点が大きく重視されます。

  • 良好な景観の形成
  • 風致の維持
  • 公衆に対する危害の防止

この点は通常の屋外広告物と同様です。
ひらたくいえば、景観上、安全上支障を及ぼす恐れがないかどうか、というのが重要です。

禁止地域等、禁止物件

住宅密集地、高速道路や鉄道付近、自然環境保全地域等、禁止地域等は通常の屋外広告物の規制と同様です。

橋梁、トンネル、信号機、道路標識等、禁止物件についても基本的に同様です。

一般的な屋外広告物設置のガイドライン (ironbird.jp)

管理・除却の義務

規則で定める投影広告物又は投影機を除き、投影広告物の管理者を置かなければなりません。
管理を怠らないようにし、良好な状態に保持しなければなりません。

管理者が変更となった場合は、遅滞なく届出を行う必要があります。

許可期間が満了した場合や許可などが取り消しとなった場合、又は投影広告物の表示・設置が必要なくなった場合は、遅滞なく投影広告物の表示を停止、又は投影機を除去しなければなりません。

従わなかった場合、行政代執行を含む必要な措置がなされる場合があります。

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投影広告物特有のルール

表示する面積

通常の屋外広告物では壁面の1/5等、表示する面積に制限がかかっていますが、投影広告物については表示する面積を定めず建物等の壁面全体への表示を可能とすることが望ましいとされています。

道路の路面への投影

道路の路面には、投影広告物を表示してはならない。ただし、交通を遮断する等の措置によって、道路交通の安全を阻害するおそれのない場合については、この限りではない。

⇒ 道路使用許可を取得して、付近一帯を合法的にジャックしてしまえば一応可能ではあります。

禁止投影広告物
  • 信号機又は道路標識等に類似し、又はこれらの効用を妨げるようなもの
  • 道路交通の安全を阻害するおそれのあるもの
規格の設定

投影広告物を表示しようとする場合は、規則で定める規格に適合しなければならない。

⇒ 規則については、各地域で確認が必要。規則の整備が間に合っていない可能性もあり、個別相談となる可能性もあります。いずれにせよ景観上、安全上支障を及ぼす恐れがないかどうかが重要視されます。

投影広告物活用地区

景観行政団体の長は、活力ある街並を維持する上で投影広告物が重要な役割を果たしている区域を、投影広告物活用地区として指定することができる。指定されると、景観上、安全上支障を及ぼす恐れがないものとして景観行政団体の長の確認を受けたものに限り、禁止許可の地域・規則で定める規格への適合が除外されます。

投影機を除去しない場合の行政代執行等・売却

除去が必要となった場合において除去しないときは、行政代執行で必要な措置をとられることとなり、投影機を保管することとなった際は保管したものの情報が公示され、売却される場合もあります。

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罰則規定

違反内容にもよりますが、最大50万円の罰金に処されます。

また、法人の代表者や代理人、使用人その他の従業員が業務として違反行為を行い罰せられた場合は、その法人や人も罰せられる両罰規定も設けられています。

最後に

プロジェクションマッピングを代表する投影広告物については、まだまだ過渡期といったところです。

事前相談や行政手続きについては、行政書士の力を借りるのが望ましいでしょう。

当事務所でもプロジェクションマッピングに関するご相談を承っておりますので、構想段階のうちからお気軽にご相談ください。

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参考資料

景観:投影広告物条例ガイドライン等 – 国土交通省 (mlit.go.jp)

投影広告物条例ガイドライン(mlit.go.jp)

河川法 | e-Gov 法令検索

淀川河川事務所 (mlit.go.jp)

文化財保護法 | e-Gov 法令検索

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