東京都の屋外広告物設置許可申請

日本の中心都市、東京。人口も多く、屋外広告物の数も多いわけですが、制度としては非常に複雑になっております。今回の記事では、東京都の屋外広告物設置許可、屋外広告業登録についてデジタルサイネージやアドトラックの規制も踏まえつつ解説します。

おおまかな注意点

屋外広告が法令で規制される大きな目的は、下記の二点です。

  • 良好な景観・風致の維持
  • 公衆に対する危害を防止

屋外広告法のみならず景観法やその他の法令で規制されています。景観・風致については地域特性が非常に考慮されるものであり、基本的には都道府県の条例に委任されております。ただし、政令指定都市と中核市では、各個別の市の条例により規制されます。東京都でいえば、八王子市と町田市は個別に屋外広告物条例が施行されております。

ケースによっては、他の手続きが必要となる場合がございます。
特に下記のような手続きが必要となる場合があります。

  • 都市計画法に基づく届出
  • 都市計画諸制度の基準等に基づく協議、申請
  • 道路使用許可
  • 道路占用許可
  • 消防法関連の手続き(アドバルーン等)

車両広告について

電車やバス等に広告を表示する場合、表示するために許可が必要な場合があります。

別の記事に纏めてありますので、こちらの記事をご確認ください。

東京都の広告トラック等の広告宣伝車の規制、必要手続き

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東京都広告物設置条例の概要

市町村独自の条例が制定されていない東京都内の地域での話になりますので、その点を留意していただければと思います。八王子市、町田市は各市の条例をご確認ください。

許可不要な場合

下記に該当する場合でも、詳細について規則や別の法令で規定されている場合がございます。

  1. 法令の規定に基づき表示する広告物又は掲出物件
  2. 国又は地方公共団体が公共的目的をもつて表示する広告物又は掲出物件
  3. 公職選挙法(昭和25年法律第100号)による選挙運動のために使用するポスター、立札等又は掲出物件
    ※公職選挙法令が適用されます。
  4. 自己の氏名、名称、店名若しくは商標又は自己の事業若しくは営業の内容を表示するため自己の住所又は事業所、営業所若しくは作業所に表示する広告物又は掲出物件で、規則で定める基準に適合するもの
    ⇒ 屋外広告物の許可不要な場合でよくある自家用広告物
  5. 前号に掲げるもののほか、自己の管理する土地又は物件に管理上の必要に基づき表示する広告物又は掲出物件で、規則で定める基準に適合するもの
  6. 冠婚葬祭又は祭札等のため、一時的に表示する広告物又は掲出物件
  7. 講演会、展覧会、音楽会等のためその会場の敷地内に表示する広告物又は掲出物件で、
    規則で定める基準に適合するもの
  8. 次に掲げる車両等に表示する広告物又は掲出物件(以下「車両広告」という。)で、規則で定める基準に適合するもの
    ア 軌道法(大正10年法律第76号)の規定に基づく軌道事業の用に供する車両
    イ 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第2条第2項に規定する自動車
    ウ 鉄道事業法(昭和61年法律第92号)第2条第1項に規定する鉄道事業の用に供する車両
    エ 鉄道事業法第2条第5項に規定する索道事業の用に供する搬器
  9. 人、動物又は車両(前号アからまでに掲げる車両等を除く。)、船舶等移動するものに表示する広告物
  10. 公益を目的とした集会、行事、催し物のために表示する簡易広告物、広告幕、アドバルーン
    ※アドバルーンは別途消防法令の手続きが必要となる可能性があります。
  11. 公益上必要な施設又は物件に寄贈名等を表示する広告物で規則で定める基準に適合するもの
  12. 公益を目的とした行事、催し物のために表示するプロジェクションマッピングで、公益性を有するもの
    ⇒ 事実上、事前相談や事前確認が推奨されます。
  13. 塀又は工事現場の板塀若しくはこれに類する仮囲いに表示する広告物で規則で定める基準に適合するもの

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広告物の設置禁止区域・禁止物件

一般的な禁止区域

禁止区域とあるものの、自家用広告物や公共的目的の道標や案内板、公衆の利便用途の電柱広告、公益上必要な施設又は物件に表示するものについて一定の要件を満たすものは許可を受けて出すことは一応可能です。

また、要件を満たした自家用広告物、管理上必要な事項を表示するもの、冠婚葬祭や祭礼のためのもの、その他公益性を目的としたものについては、許可が不要で掲示可能なものもあります。

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禁止物件

はり紙、はり札等、広告旗又は立て看板等のみ禁止となる物件

  • 電柱
  • 街路灯柱
  • 消火栓標識
  • アーチ、アーケードの支柱

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屋外広告物掲出の道路等の禁止地域並びに鉄道沿線及び電柱等の許可区域の指定

東海道新幹線、東京モノレール付近、一部高速道路や大きな道路については、特に注意が必要です。

1 東海道新幹線沿線に関する規制

品川区広町二丁目から大田区神奈川県境までの区間。
鉄道路線用地の境界線から500m以内の区域は禁止区域となります。

2 東京モノレール羽田空港線に関する規制

大田区羽田空港三丁目から港区浜松町二丁目までの区間。
両側50mについて、路線高から高さ15mまでの区間が禁止区域となります。
羽田空港三丁目から品川区勝島二丁目の地下走行区間は除く。

3 都市高速道路沿道の規制
原則の規制

原則、道路境界線から両側50m以内で、道路の路面高から高さ15mまでの空間が禁止区域となります。
高速道路が上下線等で二段以上の場合、各路面高から15mまでの空間が禁止区域となります。

湾岸線は、本線境界線から両側100m以内が禁止区域となっております。

特殊な規制

都市高速道路沿道の地域地区が第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域、旧美観地区、風致地区、第1種文教地区等の規制が厳しい地域の周辺50mの区域の場合、路面高より上の空間が禁止区域になる場合があります。

高速自動車国道沿道の規制
中央自動車道
  • 起点から調布市内まで…本線の中心線から両側200m以内が禁止区域
  • 調布市内から日野市内(用途地域指定のある地域)…本線の中心線から両側300m以内が禁止区域
  • 調布市内から日野市内(用途地域指定のない地域)…本線の中心線から両側500m以内が禁止区域
  • 調布・府中の各インターチェンジ…道路境界線から両側50m以内が禁止区域
東名自動車道
  • 世田谷区…本線の中心線から両側200m以内が禁止区域
  • 環状8号線との交点…周囲200m以内が禁止区域
  • 町田市内…本線の中心線から両側500m以内が禁止区域
関越自動車道
  • 道路本線の中心線から両側200m以内が禁止区域
その他都道や一般国道

青梅街道等、国立公園の普通地域にかかる道路等の沿道についても屋外広告物の禁止区域があります。

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例外的に許可地域となる地域

以下の地域は、例外的に許可地域となります。

  • 千代田区有楽町、丸の内、大手町、九段北、九段南の一部(旧美観地区)
  • 千代田区神田駿河台の一部(お茶の水風致地区)
  • 練馬区石神井町六丁目の一部(石神井風致地区)
  • 杉並区大宮一丁目の一部(和田堀風致地区)
  • 世田谷区喜多見、玉川、奥澤、上野毛、野毛、中町、等々力の一部(多摩川風致地区)
  • 大田区田園調布一丁目、二丁目の一部(多摩川風致地区)
  • 大田区南千束二丁目の一部(洗橋風致地区)

東京都屋外広告物条例第六条第二号ただし書の規定に基づく屋外広告物禁止除外区域指定

屋外広告物の許可不要な場合でよくある自家用広告物

『自家用広告物』とは、自己の氏名、名称、店名、商標、事業又は営業の内容を表示するために、自己の事業所や営業所等に表示する広告物です。

たとえば、『甲乙工務店、修繕・リフォーム全般』『ABCDEデイサービス、訪問介護・デイサービス』といった具合です。一定の要件を満たせば許可不要で掲示が可能です。

許可不要<許可必要<禁止、の三段階の状態が存在しているということになります。

用途地域により許可不要な合計面積が変わってきます。
ひらたく言えば5㎡以下であれば許可不要。ちょっと商業・工業よりの地域であれば10㎡以下の可能性も考えられる。という理解でよいかと思います。東京都内で店舗をお持ちの方やこれからビジネスを始めようという方は、一度確認しておいてみたほうがよいでしょう。当事務所でもお手伝いいたします。

東京都屋外広告物のしおり より

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簡易広告物等で注意しておくこと

東京都ははり紙等の簡易広告物に関する規制が一般的なガイドラインより厳しめに設定されているため、注意が必要です。

  • 営利目的のはり紙等は原則許可がいる
    ※ 自身のお店に自家用広告物として貼る場合は、一定面積以内であれば許可不要
  • 公益を目的とした集会や催し物等のために表示する場合は許可は不要。
  • 電柱、街路灯柱、消火栓標識、アーチ、アーケードの支柱への掲示はどのような目的であっても簡易広告物の掲示は不可。

広告誘導地区

知事により一定の区域が広告誘導地区として指定されている場合がございます。
東京都については、2003年に制定された東京のしゃれた街並みづくり推進条例で規定されております。

六本木ヒルズや新宿サザンテラス等、大規模な商業複合施設を中心として約100団体が登録されております。

東京のしゃれた街並みづくり推進条例
東京のしゃれた街並みづくり推進条例施行規則

広告協定地区と広告協定書作成・広告協定申請

一定の区域内の土地、建築物、工作物又は広告物等の所有者又はこれらを使用する権利のある者は、区域内の広告物の表示方法の基準に関する協定を締結して、広告協定地区として指定することができます。

代表者が広告協定書を都に申請する必要があります。

以下のような内容について、独自の規制をかけることが可能となります。

  • 広告物の形状
  • 面積
  • 色彩
  • 意匠
  • その他表示の方法

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プロジェクションマッピング活用地区指定申請

まちづくり団体は、一定の区域をプロジェクションマッピング活用地区に指定するよう申請することができます。
まちづくり団体には、下記の通り、割と広い団体が該当します。

まちづくり団体に該当する団体
  • 一般社団法人
  • 一般財団法人
  • NPO法人
  • 認可地縁団体
  • 商店街振興組合、商店街振興組合連合会
  • 株式会社、合名会社、合資会社、合同会社
  • 法人でない団体であって、組織としての体をなしている組織
    事務所の所在地、構成員の資格、代表者の選任方法、総会の運営、会計に関する事項、その他当該団体の組織及び運営に関する事項を内容とする規約その他これに準ずるものを有していること。
必要書類と内容
  • 活用地区指定申請書
  • プロジェクションマッピングを行う建築物その他の工作物等の情報
  • 上記の所有者等の承諾を証明する書類
  • プロジェクションマッピングの活用に係る運営体制
  • その他知事が必要と定める事項
注意事項
  • 計画を立案する際は、説明会を開催する等活用地区の住民の意見を反映させるよう努めなければならない。
  • 事前協議必須。あらかじめ特別区及び市町村の長の意見を聴かなければならない。
  • 活用計画に変更が発生しようとしている場合は、都に申請が必要
  • 活用計画を廃止する場合は、都に届出が必要

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屋外広告物設置許可申請について

注意事項

許可前、検討段階での注意事項

  • 2年を超えることができない。以降は更新手続きが必要
  • 許可を受けたものは、広告物のみやすい場所に許可番号・許可期間、責任者の住所氏名を表記しなければならない。ただし、自己の営業所や事業所に掲出する場合は、責任者の住所氏名は省略できる。
  • 許可にあたり必要な範囲内で条件が付される場合がある。
  • 高さ4mを超える場合は、建築基準法に基づく工作物の確認が必要。

許可後の注意点

  • 標識票の掲示義務
    広告主は、許可期間、許可番号等を表示した標識票を広告物や敷地内のみやすい箇所に張り付けること。
    その状況を写真などに記録し、標識票の貼り付け状況の報告を提出する必要があります。
  • 申請者の住所、氏名などが変更となった場合は、屋外広告物広告主等変更届の提出が必要です。
  • 広告物等の表示内容、改造、移転等の変更がある場合は、許可が必要となる場合がございますので、
    事前相談が推奨されます。
  • 広告物を完全に除去することとなった際は、屋外広告物除去届の提出が必要です。
    ただし、突き出し看板の場合は、事前に道路占用許可まわりの手続きを撤去作業前に先に行う必要がございます。
  • 許可の満了又は許可が取り消されたときは、直ちに広告物及び掲出物件を除却し、原状回復しなければなりません。
  • 広告物又は掲出物件が汚染・変色、離脱、腐朽、損壊した場合は、責任者は直ちに改修又は除却しなければなりません。

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手数料

屋外広告物設置許可申請を行う際に、都に支払う手数料も条例で定められております。

東京都屋外広告物のしおり より

地区計画等の都市計画区域内に掲示する場合の届出、申請

地区計画区域内の届出

都市計画法第58条の2(建築等の届出等)に基づき、工作物について届出が必要となる場合があります。

都市計画法の届出が不要と考えられる屋外広告物
  • 工作物で仮設のものの建設
  • 法令又はこれにもとづく処分による義務の履行として行う工作物の建設
  • 既存の建築物敷地内で行う建築物に付随する工作物の建設

都市計画諸制度の基準等に基づく協議、申請

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屋外広告業登録

東京都内で屋外広告業を行う場合は、知事の登録が必要となります。

  • 5年更新
  • 新規登録時法定手数料10,000円
  • 登録更新時法定手数料5,000円
  • 営業所ごとに標識の掲示義務(商号・名称又は氏名、登録番号その他規則で定める事項)
  • 帳簿の保存義務
  • 八王子市で営業を行う場合は、東京都への屋外広告業の登録に加えて、八王子市への特例申請が必要となります。
  • 無許可の場合は、罰則規定もございます。

業務主任者について

営業所ごとに、業務主任者の設置が義務付けられています。
次のいずれかに該当する必要があります。

  • 屋外広告士
  • 都道府県、政令指定都市、中核市で実施される講習会の課程を修了したもの
  • 広告美術仕上げについて、職業訓練指導員免許を受けたもの、技能検定に合格した者、職業訓練を修了した者
  • 知事が規則で定めるところにより認定した者
    ⇒ 屋外広告業の登録を受けた営業所において、広告物の表示または掲出物件の設置に関し、5年以上の実務経験を有する者
    ⇒ 屋外広告物法令に関する処分に違反して罰金刑以上の刑に処されて、執行後2年以内の者でないこと
    ⇒ 業務資格主任者資格認定申請書の提出が必要となります。
講習科目免除資格

次のいずれかに該当する場合は、講習科目が一部免除されます。

  • 建築士法に規定される建築士
  • 電気工事士法に規定される電気工事士
  • 電気事業法に規定される第一種~第三種電気主任技術者
  • 帆布製品製造について、職業能力開発促進法に基づく職業訓練指導員免許をもつ者、技能検定に合格した者、職業訓練を修了した者

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罰則規定

両罰規定

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して違反行為をした場合は、行為者だけでなくその法人又は人に対しても同様の罰金刑が処されます。

30万円以下の罰金

  1. 禁止地域物件違反(簡易広告物の場合は後述の過料のみ)
  2. 許可が必要な場合に無許可で屋外広告物を設置
  3. 禁止広告物等の規定に違反した場合
  4. 屋外広告物の変更改造移転を無許可で行った場合
  5. 営業停止命令違反
  6. 未登録で屋外広告業を営んだ場合
  7. 不正な手段で屋外広告業の登録を受けた場合
  8. 屋外広告業の登録の取り消し又は営業停止命令に違反した場合

20万円以下の罰金

  1. 屋外広告業登録で変更届出をしなかった
  2. 屋外広告業登録事項変更届出において虚偽の届出をした
  3. 屋外広告業登録において、業務主任者の設置に関する違反の場合
  4. 違反に対する措置の完了の届出をしなかった場合
  5. 都知事から求められた報告や資料の提出に際し、報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽報告や虚偽の資料の提出をした場合
  6. 知事による検査・必要な報告を拒み、妨げ、忌避、又は虚偽の報告をした場合

5万円以下の過料

  1. 禁止区域にはり紙、はり札、広告旗又は立て看板を表示し、又は設置した
  2. 屋外広告業の廃業届を怠った場合
  3. 屋外広告業の標識の営業所に掲げない者
  4. 帳簿に関する義務違反

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最後に

どの地域にどのような屋外広告物を設置したいかでケースによりけり、というのは全国的に共通ではありますが、
東京都は比較的例外規定も多く、非常にややこしくなっております。

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