電気工事業の登録

電気工事の欠陥による災害の発生の防止の観点から、一定の電気工事を業として行う場合は電気工事業の登録が必要となります。
電気工事業の業務の適正化に関する法律(以下、電気工事業法)と電気工事士法の規制を受けます。

違反した場合、罰則規定がございます。
登録受けないで電気工事業を営んだ、不正の手段で登録したといった場合に1年以下の懲役若しくは10万円以下の罰金に課されるか、その両方が課される場合がございます。

なお、登録要件等が知りたい場合は、後半の電気工事業の登録制度の概要からお読みください。

法律上の『電気工事』とは?

一般用電気工作物等又は自家用電気工作物を設置し、又は変更する工事のことを言います。

電圧600Vより高い電圧で使用される機器の工事、配線器具の工事が関係してくる場合は『電気工事』に該当します。

なお、下記のように電気工事にみえそうで電気工事に該当しない場合がございます。

電気工事に該当しない軽微な工事(電気工事士法)

下記のものも政令で定められた『軽微なもの』にあたるとされ、電気工事には該当しません。
ざっくりいえば、電圧600V以下の軽微な作業ということになります。

  1. 電圧600V以下で使用する差込み接続器やスイッチ等にコードやケーブルを接続する工事
  2. 電圧600V以下で使用する電気機器(配線器具を除く。以下同じ。)
    又は電圧600V以下で使用する蓄電池の端子に電線をねじ止めする工事
    ※電線(コード、キャブタイヤケーブル及びケーブルを含む。以下同じ。)
  3. 電圧600V以下電力量計若しくは電流制限器又はヒューズを取り付け、又は取り外す工事
  4. 電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する
    小型変圧器(二次電圧が36V以下のものに限る。)の二次側の配線工事

家電製品の販売に伴う工事は扱いに注意

家庭用電気機械器具の販売事業者で使用電圧が200V未満のものの販売に伴う、分岐回路より電源側の部分以外の家庭内での作業は、
電気事業法では電気工事扱いとはなりませんが、電気工事士法では電気工事となります。

したがって、家電量販店で家電を配送して設置する程度であれば、電気事業法の電気工事業の登録・通知・届出は不要ということになります。
ただし、エアコン設置・修理を行う場合は電気工事業法の規制対象の作業が多く電気工事業の登録が必要となります。

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電気工作物の違い

電気工事法2条、電気事業法38条に規定されています。

  • 一般用電気工作物
    ⇒ 他から600V以下で受電し、同一の構内で使用されるもの
    ⇒ 小出力発電設備

小出力発電設備(例:屋外の時計の上のソーラーパネル等)
⇒ 太陽電池発電設備で出力50kW未満のもの
⇒ 風力発電設備で出力20kW未満のもの
⇒ 水力発電設備で出力10kW未満のもの(ダムを伴うものは除く)
⇒ 内燃力を原動力とする火力発電設備で出力10kWのもの
上記4種類のいずれかを組み合わせて出力合計50kW以上のものは、小出力発電設備の対象外となります。

  • 事業用電気工作物
    ⇒電力会社が使用するような設備(ダム、水路、貯水池なども含む)
    ⇒自家用発電機
  • 自家用電気工作物
    一般用でも事業用でもない、送配電・発電事業に使用されるもの

大阪府 電気工事業申請の手引きより

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電気工事業の登録制度の概要

必要な手続きの場合分け

経済産業省より

場合分けにより、登録電気工事業者、通知電気工事業者、みなし登録電気工事業者、みなし通知電気工事業者の4つに分類されます。

建設業許可を取得していない建設業を取得した
一般用電気工作物等のみ、
又は一般用電気工作物等と自家用電気工作物の
電気工事を行う
登録電気工事業者みなし登録電気工事業者
自家用電気工作物のみ通知電気工事業者みなし通知電気工事業者

登録電気工事業者

  • 建設業許可を取得していない
  • 一般用電気工作物等のみ、又は一般用電気工作物等と自家用電気工作物の電気工事を行う

通知電気工事業者

  • 建設業許可を取得していない
  • 自家用電気工作物のみ電気工事を行う

みなし登録電気工事業者

  • いずれかの建設業許可を取得している
  • 一般用電気工作物等のみ、又は一般用電気工作物等と自家用電気工作物の電気工事を行う

みなし通知電気工事業者

  • いずれかの建設業許可を取得している
  • 自家用電気工作物のみ電気工事を行う

登録の際に抑えておくこと

  1. 登録の有効期限は5年
    ⇒ 以降は更新手続きが必要。
    ⇒ 有効期限の2か月前から更新受付可能。
    ⇒ 有効期限を超過した場合は廃止とみなされます。
  2. 営業所毎に主任電気工事士の設置が必要
    ⇒ 他の営業所や他の登録電気工事事業者の営業所の主任電気工事士との兼務は不可
    ⇒ 欠けた場合は、2週間以内に後任の選任が必要。(変更届も必要)
  3. 標識の掲示
    ⇒ 営業所及び2日以上電気工事を行う施工場所ごとに標識の掲示は義務。
    ⇒ 営業所の場合は、各営業所の名称及び主任電気工事士等の氏名も掲示が必要
  4. 帳簿の備付け(5年間保存が義務)
    以下の内容を記録しておく義務がございます。
    ⇒ 注文者の氏名・名称、住所
    ⇒ 電気工事の種類、施工場所
    ⇒ 主任電気工事士等及び作業者の氏名
    ⇒ 配線図
    ⇒ 検査結果
  5. 電気工事の従事制限
    ひらたくいえば、資格のない者を規制された業務に従事させてはならないということです。

    ⇒ 第一種電気工事士でない者を自家用電気工事の作業に従事させてはなりません。
    ⇒ 第一種又は第二種電気工事士でない者を一般電気工事の作業に従事させてはなりません。
    ⇒ 特殊電気工事資格者でない者を特殊電気工事の作業に従事させてはなりません。
    ⇒ 認定電気工事従事者でない者を自家用電気工作物の簡易な電気工事に従事させてはなりません。
    ⇒ 請け負った電気工事を、当該電気工事に係る電気工事業を営む電気工事業者でない者に請け負わせてはなりません。

大阪府 電気工事業申請の手引き より

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主任電気工事者の要件

  • 第一種電気工事士
  • 免状の交付日以後3年以上の実務経験を有する第二種電気工事士

下記は大阪府書式の主任電気工事者等実務経験証明書ですが、
実務経験を積んだ先の登録・届出年月日及び電気工事業の番号等が必要となります。

証明者の部分は、通常は独立前の前の会社だったりするかと思います。
しかし何らかの事情で前職の会社に証明をもらうことが難しい場合もありますが、その場合でもなんとかならないこともない場合がございます。

いずれにせよ実務経験証明書作成の際は、事前に窓口へ問い合わせを行っておいたほうがよいでしょう。

※ 第二種電気工事士免状を所持し、認定電気工事従事者認定証を取得されている場合、電気工事業の申請時に届出すれば600V以下の自家用電気工作物の作業も可能となります。

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営業所ごとに備えなければならない器具

  1. 回路計(抵抗、交流電圧が測定可能なもの)
  2. 絶縁抵抗計
  3. 接地抵抗計

自家用電気工作物の工事も行う場合は、さらに下記の器具も必要となります。

  1. 低圧検電器
  2. 高圧検電器
  3. 継電器試験設備
  4. 絶縁耐力試験装置

注意すべき申請先

経済産業省より

営業所の設置数と場所により3パターンに分けられます。

一つの都道府県の区域内のみであれば都道府県知事となっており、都道府県庁が窓口となりますが、
都道府県知事から委託された団体が窓口となっている場合があります。
大阪府であれば、大阪府電気工事工業組合が事実上の窓口となります。

産業保安監督部の管轄範囲

同じ都道府県でも地域によって産業保安監督部の管轄が異なる場合があります。
支部違いの地域が散見されますが、兵庫県と静岡県は産業保安監督部の境界をまたいでいるため特に注意が必要です。
北海道、沖縄はどこの産業保安監督部にも所属しないため、加えて他の都道府県も含む場合は経済産業大臣許可となります。

  1. 関東東北産業保安監督部東北支部
    ⇒ 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、新潟県
  2. 関東東北産業保安監督部
    ⇒ 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県の一部
  3. 中部近畿産業保安監督部
    ⇒ 長野県、愛知県、岐阜県、静岡県の一部、三重県の一部
  4. 中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督部
    ⇒ 富山県、石川県、岐阜県の一部、福井県の一部 
  5. 中部近畿産業保安監督部近畿支部
    ⇒ 滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、兵庫県の一部、福井県の一部、岐阜県の一部、三重県の一部
  6. 中国四国産業保安監督部
    ⇒ 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、兵庫県の一部、香川県の一部、愛媛県の一部
  7. 中国四国産業保安監督部四国支部
    ⇒ 徳島県、高知県、香川県の一部、愛媛県の一部
  8. 九州産業保安監督部
    ⇒ 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県

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建設業の電気工事業との違い

建設業法においては、請負契約の適正化と発注者の保護という点が重視されます。
500万円以上の請負契約を行う場合は、建設業許可申請が必要となります。

電気事業法においては、電気工事の欠陥による災害の発生の防止という点が重視されます。
業として電気工事を行う、という点で実際に作業を行う業者は登録等が必要です。

法定手数料

手続の際に、手続き先の行政側に支払う手数料となります。
他、登記事項証明書や住民票の取得など、付随する書類取得の際にも手数料がかかるものがございます。
行政書士に代理申請を依頼した場合、行政書士への報酬が発生します。

申請内容申請手数料
電気工事業
新規(法人・個人問わず)
22,000円
電気工事業
更新(法人・個人問わず)
12,000円
みなし届出
通知
みなし通知
手数料不要
変更届
個人、法人名の変更
申請者の住所、登記簿上の所在地変更
行う電気工事の種類の変更
2,200円
変更届
法人の代表者・役員変更
営業所の所在地の変更
営業所の名称の変更
主任電気工事士等の変更
主任電気工事士等の免状の種類変更
手数料なし
登録証の再交付
(汚れ、破損、紛失等の場合)
2,200円

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最後に

電気工事業は、電気工事を行う際に必要となるものです。
登録しているのであれば、Webサイト等で取得している旨をしっかりと明記しておくのがよいでしょう。

電気工事をする業者の方からすれば、電気工事業の登録をしているのが当たり前だと思うかもしれません。
しかし必須となる電気工事士には一定年数以上の実務経験が求められ、登録しようと思っても条件に合う方がいなければすぐには登録できません。

業の登録は信用の証で、立派な強みです。

電気工事業登録のご相談は当事務所でも承っておりますので、お気軽にご相談ください。

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参考

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