一般的な屋外広告物設置のガイドライン
屋外広告物の概要
はじめに
屋外広告は良好な景観・風致の維持、公衆に対する危害の防止という観点から、多くの規制がなされております。多くの地域では国土交通省が作成した屋外広告物条例ガイドライン、これをベースに作成されており、地域特性に応じて個別に規制内容に変更を加えている形となります。一般的な規制内容を覚えておけば、ある程度の方向性はみえてくるかと思います。
言わずもがなですが、詳細については時期や各地域によって異なる部分も多々ありますので、都度確認が必要です。
屋外広告物のことでお困りでしたら、是非当事務所へご相談ください。
屋外広告物とは
下記の4条件をすべて満たすものが該当します。表示内容の営利性・非営利性を問いません。
- 常時又は一定の期間継続して表示されるものであること。
- 屋外で表示されるものであること。
- 公衆に表示されるものであること。
- 看板、立看板、はり紙、はり札、広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出・表示されたもの、これらに類するものであること。
チラシそのものはバラまかれる限り広告物には当たりませんが、壁や電柱に張った時点で屋外広告物となります。
というわけで、企業が宣伝のために掲示されるもののみならず、マンション名のネームやコインパーキングの標識、道案内のための地図板といったものも屋外広告物に該当します。屋外広告物に含まれるものは意外と多いです。
各地域の条例で認められた一定の場合を除き、屋外広告物設置許可申請が必要となります。
基本的には都道府県ですが、特別区(東京23区)、政令指定都市、中核市の場合は都道府県ではなくそれぞれの市区に申請を行います。なお、実際には後述する他の申請や届出、それに伴う事前相談が必要となってきます。
屋外広告に関する規制の概要
屋外広告物法、屋外広告物法施行規則だけでなく、景観法やその他多数の法令で複雑に規制されています。ただし、突き詰めていくと屋外広告が法令で規制される大きな目的は、下記の二点に集約されます。
- 良好な景観・風致の維持
- 公衆に対する危害を防止
景観・風致については地域特性が大きく考慮されるものであり、基本的には都道府県の条例に委任されております。ただし、特別区(現状東京23区)、政令指定都市(人口50万人以上の指定された市)、中核市(人口20万人以上の市)では、それらの区や市の条例に委ねられることとなります。
ひらたくいえば、人口の多い街では、その地域の市役所の情報を必ず確認しておく必要があります。
一定の場合を除き、屋外広告物設置許可申請を中心とした行政上の手続きが必要となります。
また、設置前の許可申請のみならず、設置後の完了届や意匠・内容・所有者等の変更の際にも変更届が必要であり、3年に1回以内の更新の手続きや点検の義務等、意外と気を付けなければならないことが多いです。
制限区域・物件
制限区域
下記に該当する場合は何らかの制限がかかっている可能性が考えられます。
地域によっては禁止区域扱いとされている場合が多いため、特に注意が必要な区域となります。
都市計画法
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 田園住居地域
- 景観地区、風致地区、伝統的建造物群保存地区
景観法、それに基づく景観計画・景観条例
- 準景観地区
- 地区計画等形態意匠条例に指定された地域
文化財保護法、都道府県・市町村の文化財保護条例
- 史跡名勝天然記念物のある区域
- 文化財の指定を受けた建物やその敷地、その周辺
森林法
- 保安林として指定された森林のある地域
都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律
- 保存樹林のある地域
自然環境保護法
- 原生自然環境保全地域
- 自然環境保全地域
都市公園法、社会資本整備重点計画法施行令
- 都市公園
- 政令で指定された公園又は緑地の区域
市民農園整備促進法
- 市民農園の区域
その他の区域(周辺地域や建物、敷地、境域含む)
- 道路、鉄道、軌道、索道
- 河川、湖沼、渓谷、海浜、高原、山、山岳
- 港湾、空港、駅前広場
- 官公署、学校、図書館、公会堂、公民館、体育館及び公衆便所
- 博物館、美術館及び病院
- 古墳、墓地社寺、教会、火葬場の建造物
- その他条例により指定された地域又は場所
屋外広告物条例ガイドライン
禁止地域
ガイドライン上では、上記で述べた制限地域は原則禁止地域とされております。
ただし例外規定もいくつか存在します。
- 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第二章の規定により定められた第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、田園住居地域、景観地区、風致地区、特別緑地保全地区、緑地保全地域、生産緑地地区又は伝統的建造物群保存地区(知事が指定する区域を除く。)
- 景観法(平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項の規定により指定された準景観地区であって、同法第七十五条第一項に規定する条例により制限を受ける地域のうち、知事が指定する区域
- 景観法第七十六条第三項の地区計画等形態意匠条例(以下「地区計画等形態意匠条例」という。」により制限を受ける地域のうち、知事が指定する区域
- 市民農園整備促進法(平成二年法律第四十四号)第二条第二項に規定する市民農園の区域(知事が指定する区域を除く。)
- 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第二十七条又は第七十八条第一項の規定により指定された建造物及びその周辺で知事が指定する範囲内にある地域並びに同法第百九条第一項若しくは第二項又は第百十条第一項の規定により指定され、又は仮指定された地域
- 都道府県文化財保護条例(昭和年県条例第号)第条の規定により指定された建造物及び同条例第条の規定により指定された樹木等並びにこれらの周囲で知事が指定する範囲内にある地域
- 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二十五条第一項第十一号の規定により指定された保安林のある地域(知事が指定する区域を除く。)
- 自然環境保全法(昭和四十七年法律第八十五号)第三章及び第四章の規定により指定された原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域(知事が指定する区域を除く。)
- 都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律(昭和三十七年法律第百四十二号)第二条第一項の規定により指定された保存樹林のある地域
- 高速自動車国道及び自動車専用道路(休憩所又は給油所の存する区域のうち知事が指定する区域を除く。)の全区間、道路(高速自動車国道及び自動車専用道路を除く。)の知事が指定する区間並びに鉄道、軌道及び索道の知事が指定する区間
- 道路及び鉄道等(鉄道、軌道及び索道をいう。以下同じ。)に接続する地域で知事が指定する区域
- 都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第二条第一項に規定する都市公園及び社会資本整備重点計画法施行令(平成十五年政令第百六十二号)第二条各号に規定する公園又は緑地の区域
- 河川、湖沼、渓谷、海浜、高原、山、山岳及びこれらの附近の地域で、知事が指定する区域
- 港湾、空港、駅前広場及びこれらの附近の地域で、知事が指定する区域
- 官公署、学校、図書館、公会堂、公民館、体育館及び公衆便所の建物並びにその敷地
- 博物館、美術館及び病院の建物並びにその敷地で、規則で定める基準に適合するもの
- 古墳、墓地及びこれらの周囲の地域で、知事が指定する区域
- 社寺、教会、火葬場の建造物及びその境域で、知事が指定する区域
制限地域
必ずしも設置禁止とされているわけではないですが、知事の許可が必要とされている地域・物件であり、
制限が加えられている地域・場所となります。
- 景観法第八条第二項第一号に規定する景観計画区域(知事が指定する区域を除く。)
- 地区計画等形態意匠条例により制限を受ける地域
- 道路休憩所又は給油所の存する区域のうち知事が指定する区域並びに道路及び鉄道等の知事が指定する区間
- 道路及び鉄道等に接続する地域で知事が指定する区域
- 河川、湖沼、渓谷、海浜、高原、山、山岳及びこれらの附近の地域で知事が指定する区域
- 港湾、空港、駅前広場及びこれらの附近の地域で、知事が指定する区域
制限物件
景観風致維持、公衆に対する危害の防止の観点で考えてみると、
ここに屋外広告物を設置するとまずいことが起きる可能性が十分にあると考えると、
妥当と言えるものが挙げられます。
ただし、必ずしも禁止されているわけではなく、場合によっては可能な場合もありますので、
詳細は各地域の手引きや条例を必ず確認することが必要となります。
- 橋梁、トンネル、高架構造及び分離帯
- 石垣、よう壁の類
- 街路樹、路傍樹及び保存樹(都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律第二条第一項)
- 信号機、道路標識及び歩道柵、駒止めの類並びに里程標の類
- 電柱、街灯柱その他電柱の類で知事が指定するもの
- 消火栓、火災報知機及び火の見やぐら
- 郵便ポスト、電話ボックス及び路上変電塔
- 送電塔、送受信塔及び照明塔
- 煙突
- ガスタンク、水道タンクその他タンクの類
- 銅像、神仏像及び記念碑の類
- 景観重要建造物及び景観重要樹木(景観法により指定)
- 道路の路面
- その他条例で定められた物件(景観風致維持、公衆に対する危害の防止)
⇒ 公衆トイレの壁面など。
内容・表示方法の制限
景観風致維持、公衆に対する危害の防止の観点から、許可の有無も含めて制限がなされております。
適用除外
制限地域の適用除外(許可申請が不要な場合)
制限地域の項目が適用されないという意味での適用除外となります。なお、後述する禁止広告物に該当してしまう場合は、下記に挙げた適用除外の広告物であっても適用されますので注意が必要です。
知事の許可を受けて、という文言がないものについては、特に申請不要で掲示することができることとなります。
- いわゆる自家用広告物
自己の氏名、名称、店名若しくは商標又は自己の事業若しくは営業の内容を表示するため、自己の住所又は事業所、営業所若しくは作業場に表示する広告物又はこれの掲出物件で、規則で定める基準に適合するもの
※ 敷地内で合計表示面積が一定以下(7㎡以下とされることが多いが地域による)の場合は、申請不要となっていることがあります。 - 自己の管理する土地又は物件に管理上の必要に基づき表示する広告物又はこれの掲出物件で規則で定める基準に適合するもの
- 工事現場の板塀その他これに類する板囲いに表示される広告物で、規則で定める基準に適合するもの
- 冠婚葬祭又は祭礼等のため、一時的に表示する広告物又はこれの掲出物件
- 講演会、展覧会、音楽会等のためその会場の敷地内に表示する広告物又はこれの掲出物件
- 電車又は自動車に表示される広告物で、規則で定める基準に適合するもの
※ 条例で一定の基準が設けられていて申請が必要とされている場合があります。 - 自動車で他の都道府県に存する運輸支局又は自動車検査登録事務所に係る自動車登録番号を有するものに当該都道府県の屋外広告物条例の規定に従つて表示される広告物
※ 条例で一定の基準が設けられていて申請が必要とされている場合があります。 - 人、動物又は車両(電車又は自動車を除く)、船舶等に表示される広告物
※ 現状、ちんどん屋は屋外広告物許可申請は不要ですが、道路使用許可申請など別の法令に留意する必要があります。 - 政治資金規正法第六条第一項の届出を行った政治団体が政治活動のために表示又は設置するはり紙、はり札等、広告旗又は立看板等で、規則で定める基準に適合するもの
【規則の例(地域によって数字や色が異なるが、5つの規定は概ね盛り込まれている)】
・ (大きさ)表示面積が○平方メートル以下であること。
・ (色制限)色彩の地色が○色ではなく、かつ、蛍光塗料を用いていないこと。
・ (表示期間)表示期間が○日以内であること。30日以内とされている地域が多い。
・ (期間と連絡先の明示)表示期間並びに表示者名又は管理者名及びその連絡先を明示していること。
・ (権利者の承諾)表示又は掲出する場所又は施設の管理者(管理者がない場合にはその所有者)の承諾を得ていること
↓ここから下は、行政側で設置する場合、又は少なくとも行政への相談が推奨されるようなケースになります。 - 道標、案内図板その他公共的目的をもつた広告物若しくは公衆の利便に供することを目的とする広告物又はこれらの掲出物件については、規則で定めるところにより知事の許可を受けて表示し、又は設置する場合
- 国又は地方公共団体が公共的目的をもつて表示する広告物又はこれを掲出する物件で知事が指定するもの
- 地方公共団体が設置する公共掲示板に規則で定めるところにより表示する広告物
- 公益上必要な施設又は物件で知事が指定するものに表示し、又は設置する広告物又は掲出物件であって、その広告料収入を当該公益上必要な施設又は物件の設置又は管理に要する費用に充てるものについては、規則で定めるところにより知事の許可を受けて表示し、又は設置する場合、禁止地域、街灯柱、路上変動塔の規定は適用しない。
- 法人その他の団体が表示し、又は設置する広告物又は掲出物件であって、その広告料収入を地域における公共的な取組であって知事が定めるものに要する費用の全部又は一部に充てるものについては、規則で定めるところにより知事の許可を受けて表示し、又は設置する場合、禁止地域の規定、禁止物件の一部の規定は適用しない。
- 公益上必要な施設又は物件で知事が指定するものに、規則で定める基準に適合して寄贈者名等を表示する場合、禁止地域、禁止物件、知事の許可が必要な許可地域の規定は適用しない。
簡易広告物の許可不要な場合で割と多いルール
はり紙、はり札、のぼり、広告旗、一般の大人の背丈程度以下の立て看板等の小さな広告物を簡易広告物といいますが、一定の場合は許可が不要とされていることが多いです。
以下に共通している点を挙げます。当然、地域によって異なる場合がありますので、詳細は各地域の例規集で屋外広告物条例・規則、屋外広告物手引き、屋外広告物ガイドラインで確認ください。
- (一定の地域)禁止地域、制限地域、禁止物件に該当していないこと
- (表示期間)掲出期間が30日を超えない
- (色制限)色彩の地色が○色ではなく、かつ、蛍光塗料を用いていないこと。
- (期間と連絡先の明示)表示期間並びに表示者名又は管理者名及びその連絡先を明示していること。
- (権利者の承諾)表示又は掲出する場所又は施設の管理者(管理者がない場合にはその所有者)の承諾を得ていること
- (規格)※地域によって数値が異なる場合がございます
・はり紙、はり札等:縦1.2m、横0.8m以内のもの
・広告旗:高さ2m、幅0.5m以内のもの
・立看板等:高さ2m、幅1.5m以内のもの
他の法令に規定があるために屋外広告物条例では適用除外
下記の二点については、適用除外の条項が上記に比べて広範となっておりますが、
屋外広告物法令ではなく、他の法令で規定がなされているためそちらに従ってくださいということになります。
- 法令の規定により表示する広告物又はこれの掲出物件
- 公職選挙法による選挙運動のために使用するポスター立札等又はこれらの掲出物件
選挙運動の際の注意点は、枚数、大きさ、方法など公職選挙法に細かく規定がなされています。
詳細については、公職選挙法特に143条以降をご確認ください。
禁止広告物
こちらの禁止広告物には適用除外はありません。
屋外広告物設置許可申請が不要な場合でも、これらに該当しないよう適切に管理する必要があります。
景観風致維持、公衆に対する危害の防止の観点で考えてみると、あまりにも妥当と言えるものが挙げられます。
- 著しく汚染し、たい色し、又は塗料等のはく離したもの
- 著しく破損し、又は老朽したもの
- 倒壊又は落下のおそれがあるもの
- 信号機又は道路標識等に類似し、又はこれらの効用を妨げるようなもの
- 道路交通の安全を阻害するおそれのあるもの
意匠、色彩について
屋外広告物条例や規則だけではなく、景観法に基づく景観計画、景観条例で規定されることとなります。
市町村に景観条例がない場合は、都道府県の景観条例に従うこととなります。
各地域の屋外広告物の手引きや景観ガイドラインでその詳細を確認することができます。
条例とガイドラインの役割の違いは以下のようになります。
屋外広告物条例 | 屋外広告物のルール | 数値で規制する |
屋外広告物ガイドライン | よりきめ細やかな誘導 | 質を高める |
具体的な内容として、以下のようなものが挙げられます。
大きさ | 建物の高さの1/3以内、等 |
高さ | 地上からの高さ10m以内、等 |
広告面積(最小限の大きさ) | |
色彩の制限 | 基本的に、派手な色を過大に使用しない。 JIS規格のマンセル値で明度と彩度の指定がされている。 実際の屋外広告物設置許可申請でも使用する色彩のマンセル値での説明が求められる。 |
スカイラインの維持 | 周囲の建物と最上部の高さのラインを統一させる。 |
表示・設置の量 | まとめて表示して統一感を出す。 |
意匠の調和 | 周囲の雰囲気に馴染むもの。 |
適切な文字の大きさ
文字の高さ × 250 = 視認距離
吹田市屋外広告物ガイドラインより
広告主、広告業者、広告内容の規制
条例等によっては、一部施設等において広告主や広告業者、広告内容に制限がかけられている場合もあります。
例として、大阪府の官公署等における屋外広告物の掲出ガイドラインの例を挙げます。
官公署の屋外広告物のガイドライン(大阪府)
次の広告主又は広告業者の広告は掲載しないものとする。なお、すでに広告を掲載中であっても、広告主又は広告業者がつぎのいずれかに該当するに至った場合も同様とする。
- 法令等に違反するもの
- 法令等に基づき、営業停止等の重大な不利益処分を受けているもの
- 風俗営業等を営むもの
- 暴力団及び暴力団員並びに暴力団密接関係者
- 貸金業を営むもの
- 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づく処分対象の団体及びその構成員
- インターネット異性紹介事業を営むもの
- 連鎖販売取引、業務提供誘因販売取引、これらに類する取引に関する業務を営むもの
- 民事再生法又は会社更生法による再生手続き又は更生手続き中のもの
- 屋外広告業の登録を行っていない広告業者
- 国又は地方公共団体により、入札参加停止措置又は入札参加除外措置を受けているもの
- 行政財産の使用許可に関し、自らの責に帰すべき事由により当該許可の取り消し等の処分を受けたことがあるもの
- 自らの責に帰すべき事由により、社会的信用を著しく失墜しているもの
- その他、官公署等施設に広告を掲載する事業者として不適切と認められるもの
照明・電光表示(デジタルサイネージ)を伴う広告物
屋外広告物設置条例ガイドラインでは照明・電光表示を伴う屋外広告物については、特段細かく記載はありませんが、別途規定が設けられている場合があります。特にLEDデジタルサイネージは今後さらに増加していくものと思われます。規制が厳しい反面、広告効果が高く、自治体によっては実証実験という形で試験的な導入がなされている地域もあります。東京都については、プロジェクションマッピングやデジタルサイネージを活用したまちづくり制度も導入されていたりします。
デジタルサイネージについては、別の記事にまとめてあります。
デジタルサイネージ設置の際に注意しておきたい法制度等 (ironbird.jp)
想定される手続き
景観法に基づく景観条例で求められる事前相談と届出
2004年に景観法が制定され、景観計画に基づく規制と誘導がされている地域が非常に数多くあります。市町村の中にも部分的に特別な施策が実施されている地域もございます。
各市町村に事前協議を行ってから届出を行う形となります。特に都市部では事実上必須といってもよい手続きになります。
景観:景観法の施行状況 - 国土交通省 (mlit.go.jp)
道路使用許可(道路交通法77条)
管轄する警察署の署長の許可が必要です。警察署の管轄範囲は必ずしも市町村区通りではない場合がありますので、各都道府県の条例を確認する必要があります。
77条二 石碑、銅像、広告板、アーチその他のこれらに類する工作物を設けようとする場合
道路交通法 | e-Gov法令検索
道路占有許可(道路法32条)
道路管理者の許可が必要です。誰が管理しているか次第で窓口が変わるので注意が必要です。
なお、上記の道路使用許可と合わせて警察署経由で一括で申請できる場合があります。
第三十二条 道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない。
一 電柱、電線、変圧塔、郵便差出箱、公衆電話所、広告塔その他これらに類する工作物
道路法 | e-Gov法令検索
二 水管、下水道管、ガス管その他これらに類する物件
三 鉄道、軌道、自動運行補助施設その他これらに類する施設
四 歩廊、雪よけその他これらに類する施設
五 地下街、地下室、通路、浄化槽その他これらに類する施設
六 露店、商品置場その他これらに類する施設
七 前各号に掲げるもののほか、道路の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある工作物、物件又は施設で政令で定めるもの
※歩行者利便増進道路制度(ほこみち)
なお、道路空間を活用して地域の活性化を図る意味合いから歩行者利便増進道路制度(ほこみち)という制度もあります。
歩行者利便増進道路(ほこみち)制度 | アイアンバード行政書士事務所 (ironbird.jp)
他人の土地の使用許諾
他人名義の土地や物件を使用する場合は、使用許諾が必要となります。
立体広告物で立体物が隣の私有地や私道の上にかかる場合でも、事前に利用許諾が必要となります。
利用許諾をとらなかった場合、裁判沙汰となり撤去命令が下され、大きな損害を被る場合があります。
参考事例
二審も立体看板撤去命じる 大阪「金龍ラーメン」訴訟(共同通信) - Yahoo!ニュース
利用許諾内容について、書面で取り交わしておくことをお勧めします。
知的財産権の調査
広告物の形状や、広告内容は知的財産権に属する話になります。
意匠権、商標権、著作権の侵害がないかどうかの確認も重要です。
建築確認申請
広告物の高さが4メートル以上となると工作物扱いとなり、建築基準法に基づく工作物の確認申請が必要となります。工作物の確認申請の代理業務については建築士又は行政書士が行うこととなります。
(目的)
建築基準法 | e-Gov法令検索
第一条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
建築物の確認申請の代理者は、建築士又は行政書士で可となるが、工作物の確認申請の場合は、建築士資格がない場合は代理者になることができないのか。
工作物の設計・工事監理等については建築士の業務独占の範囲外となりますので、特に建築士資格は求められていませんが、工作物の確認申請の代理業務については、建築物と同様、建築士又は行政書士が行うこととなります。
一般財団法人建築行政情報センター > 改正建築基準法Q&A検索システム (icba-info.jp)
農地に屋外広告物を設置する場合
市街化調整区域内の農地に屋外広告物を設置する場合に、農地法に基づく農地転用手続きが必要となる場合があります。
農振農用地の場合は、さらに別途手続きが必要となります。これは非常にハードルが高いです。
市街化区域の場合は、別途届出が必要となります。
ネオン管灯設備設置の届出
設備容量2キロボルトアンペア以上のネオン管灯設備を設置する場合、消防法に基づく届出が必要となります。
アドバルーンを掲出する場合
近年ではあまりみかけなくなったアドバルーンですが、これも手続きが非常に厄介です。
水素ガスを使用したアドバルーンを掲出する場合は、消防法に基づく届出が必要となります。
また航空法に基づく許可申請が必要となる場合があります。いずれにせよ国土交通省に事前相談をしておくべきでしょう。
設置後に必要な手続き
看板設置工事が完了した場合
設置工事完了の届出
条例により、屋外広告物設置工事完了の届出が必要な場合がございます。
内容に変更が生じたとき
なんらかの情報の変更が発生した場合、手続きが必要となります。
屋外広告物変更許可申請
屋外広告物の数量、形状、材質、デザインが変わった場合等、看板そのものの内容や情報が変更となる場合に必要となります。
屋外広告物変更届
設置者等の商号名称、代表者氏名が変わった場合等、管理する側の人や団体の情報が変更になった際ははこちらが必要となります。
道路占用に関するお手続き
突き出し看板など、敷地外の道路の上空を使用している場合は道路占用許可が必要となりますが、その内容に変更が生じた場合もまた手続きが必要となります。
道路占用変更届
占用者の社名、住所、氏名が変更となった場合や更新申請案内の送付先を変更したい場合は、道路占用変更届が必要となります。
道路占用権利義務承継許可申請
建物の売買や譲渡等で看板の所有者が変わった場合は、道路占用権利義務承継許可申請が必要です。
申請手数料が別途必要となります。
大阪市の場合、手数料1,100円に理由書と誓約書(新しい所有者の名前で)が必要となります。
道路使用に関するお手続き
道路占用許可に関するお手続きが必要な場合、道路使用許可も必要となります。
道路使用許可についてにも、道路使用者の情報等に変更が生じた場合は別途お手続きが必要となります。
点検、更新の手続き
条例で決められた期間が過ぎる期間を設置する場合は、更新の申請が必要となります。
他者の財産や身体に被害が及ばないよう、屋外広告物も点検が必要です。
特に、はり紙、はり札、立看板、広告幕及びアドバルーンを除く高さが4mを超える広告物等は、条例により有資格者による点検と点検報告の届出が義務付けられている場合がございます。(大阪府屋外広告物条例)
看板を撤去する際の手続き
看板を土台から撤去した場合は、屋外広告物撤去届が必要となります。
突き出し看板等で道路占用許可を行っている場合は、道路占用許可返還届の提出が必要となります。
その他順守事項
電気用品安全法、消防法、製造物責任法等も順守する必要がありますが、
ひらたくいえば、『安全第一』という所に集約されます。
違反した場合に想定される措置
- 行政指導
- 行政処分(必要な措置の命令、条例により罰金、過料)
- 行政代執行により強制撤去、撤去費用の徴収
法令で認められている一定の場合除き、無許可での屋外広告物設置は絶対にやめましょう。
屋外広告業登録
屋外広告業とは、広告主から広告物の表示・設置に関する工事を請け負い、屋外で公衆に表示することを『業』として行うことを指します。法人個人は問いません。また、単に看板を作成しているだけの場合は、屋外で公衆に表示をするための設置に関する工事をしていないので屋外広告業には当たりません。
屋外広告業については、別記事にて取り扱うことにします。
屋外広告業登録 | アイアンバード行政書士事務所 (ironbird.jp)
屋外広告業登録の登録先 | アイアンバード行政書士事務所 (ironbird.jp)
参考資料
国土交通省屋外広告物条例ガイドライン (mlit.go.jp)
バリアフリー:公共交通関係のガイドライン - 国土交通省 (mlit.go.jp)
屋外広告物|吹田市公式ウェブサイト (city.suita.osaka.jp)
お問い合わせ
屋外広告物設置に関するご相談やお問い合わせはこちらのフォームからどうぞ。
大阪府以外からのご相談も承っております。