「大屋根リングの全周保存と収益化利活用によるレガシー化」提案内容
1. 大屋根リングの文化的・都市的意義
大阪・関西万博の象徴的建造物「大屋根リング」は、建築家・藤本壮介氏の手により、「自然と建築の共生」や「開かれた共創空間」を理念として設計されました。外径約675m、面積約61000平方メートルという世界的スケールを持ち、単なる屋根構造ではなく、多様なパビリオンや人々を「包み込む」社会の姿を象徴する構造物です。
その象徴性は、建築的にも都市景観的にも非常に高い評価を得ており、現地来訪者によるSNS投稿や報道においても「記憶に残る風景」「一生に一度の体験」という声が多数見られます。これは観光都市・大阪のブランド力強化に直結し、大阪観光局が掲げる「国際文化観光都市」構想とも極めて親和性が高いと言えます。
2. 維持費への懸念と、それを上回る「稼ぐリング」構想
もちろん、これほどの規模を誇る構造物には維持管理・改修コストが伴います。しかし、この懸念は単なる「費用」ではなく「投資」として捉えるべきです。以下のような利活用によって、リングはむしろ自走的に価値を生み出す「都市の収益装置」となります。
【活用・収益案】
利活用、具体例、収益源の観点から申し上げます。
常設イベント会場として、大規模ライブ、eスポーツ、展示会を行い、会場使用料、協賛金を得る。
展示・交流ゾーンとして、地域企業・大学による体験ブース、出展料、スポンサー収入を得る。
夜間観光拠点として、プロジェクションマッピング、光の演出を行い、観覧料、関連ツアー収入を得る。副次的に咲洲庁舎コスモタワー等の他ランドマークへも効果が波及する。
その他にも屋根下カフェ・物販・アート市、都市型キャンプグランピング、屋根下の全天候型空間利用といった商業利用は可能かと思われます。
上記は「単年度黒字」を狙うものではなく、地域価値・都市ブランドの維持によってIRやMICE来場者数全体に寄与する効果が大きく、都市全体で見れば費用対効果は十分見合います。
3. 訪問者評価と象徴性の定量的根拠
2025年6月時点で、大屋根リング関連のSNS投稿(#大屋根リング)は3万件超。6月速報の来場者アンケートでも「印象に残った施設」第1位との調査も報告されています。これは、単なる建造物を超えて、人々の心象風景に刻まれる都市の記号として定着しつつある証拠です。
こうした『記憶される風景』の存在は、都市再生事業において極めて稀有であり、このような景観資産を取り壊せば都市の顔を自ら失う行為に等しいものと考えます。
4. マスタープランVer.2.0における位置づけ強化の必要性
今回示されたマスタープランVer.2.0では、「ハードレガシー」としての大屋根リングの存在に一定の言及はあるものの、その保存範囲・用途・収益性についての記述は抽象的にとどまっています。今後、開発事業者の選定・利活用方針の策定段階で、以下の点が明確に行政の方針として示されることが不可欠です。
5. 要望事項
大屋根リングの「全周保存」を原則とする方針を、マスタープランに明記してください。
保存に際し、共創・包摂・開放という建築意図を継承した空間構成や照明・素材の保全方針を盛り込んでください。
「維持=コスト」とせず、上述のような活用スキームを行政主導で検討・可視化し、開発事業者の提案条件に明示的に加えてください。
将来的に、IR、MICE施設、健康関連ゾーン等との回遊動線の中心としてリングを据えた都市空間設計を検討してください。
6. 結び
大屋根リングは、多様な世界がつながりあうことができる時代の象徴であり、また万博という時限的イベントの象徴を超えて、夢洲の未来を語るうえで不可欠な「都市の物語装置」です。大阪はこれまでも通天閣、太陽の塔などを通じて、都市と建築と記憶を融合させてきました。
「稼げる都市・大阪」「世界が憧れる都市風景」を未来に繋ぐために、大屋根リングを『壊すか残すか』の選択肢ではなく、景観資産として活用し『どう稼ぐか』という未来志向の議論へと昇華させていただきたく、強く要望申し上げます。