宅地建物取引業・賃貸住宅管理業・不動産投資顧問業の違い
目次
3つの登録制度の違いを分かりやすく解説します
不動産関連ビジネスを行う上で、
必ず一度は直面するのが次の疑問です。
「この業務、どの登録(免許)が必要なのか?」
「宅建業と管理業って何が違う?」
「投資顧問って免許がいるの?」
実はこの3つは、
似ているようで、根拠法令も制度趣旨もまったく異なります。
本記事では、
- 宅地建物取引業
- 賃貸住宅管理業
- 不動産投資顧問業
それぞれの登録制度について、
実務目線で分かりやすく解説します。
① 宅地建物取引業とは
制度の趣旨
不動産取引(売買・交換・賃貸)において、
取引の安全と消費者保護を目的とした制度です。
根拠法令
- 宅地建物取引業法
どんな業務が対象か
次の行為を「業として」行う場合、
原則として宅地建物取引業に該当します。
- 不動産の売買・交換の代理・媒介
- 不動産の賃貸の代理・媒介
登録(免許)
- 必須(免許制)
- 1都道府県内のみ → 都道府県知事免許
- 複数都道府県 → 国土交通大臣免許
実務上の注意点
- 「仲介手数料をもらう」=ほぼ宅建業
- 管理だけのつもりでも、媒介行為をすると宅建業に該当
- 名刺・HP・広告表現での「業務内容の書き方」に注意が必要
② 賃貸住宅管理業とは
制度の趣旨
賃貸住宅の管理業務について、オーナー保護・管理業務の適正化を図る制度です。
もっとひらたくいえば、『人・お金・体制が揃っているまともな管理会社か?』を確認する制度です。
2021年に本格施行された比較的新しい登録制度となります。
5年毎に更新が必要です。
制度解説 | 賃貸住宅管理業法ポータルサイト - 国土交通省
建設産業・不動産業:賃貸住宅管理業法 法律、政省令、解釈・運用の考え方、ガイドラインについて - 国土交通省
根拠法令
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律
どんな業務が対象か
- 賃貸住宅の管理業務
(家賃管理、入居者対応、修繕手配など) - サブリース(マスターリース)事業
建物のオーナーから物件を一括で借り上げ、それを転貸(又貸し)する賃貸経営方式
登録の要否
- 一定規模以上で登録必須
- 管理戸数が200戸以上
- 管理戸数が200戸未満の小規模な賃貸住宅管理業者様の場合は任意登録となりますが、
社会的信用力を確保するにあたって登録を受けることが望ましいでしょう。
登録の要件
人的要件
営業所又は事務所ごとに業務管理者を置く必要がありますが、一定の要件が必要です。
次のいずれかに該当する必要があります。
- 宅地建物取引士の登録+管理業務に関する実務講習修了or管理業務の実務経験2年
- 賃貸不動産経営管理士への登録(令和4年6月までに登録している場合は施行後の研修が必要)
- 登録証明事業の試験合格者
他の許認可でも割とありますが、欠格事由に該当しないこと(法人の場合は役員全員が該当していないこと)も重要です。
「誰でもなれる」わけではないですし、名ばかり管理者も言うまでもなく不可です。
財産的基礎の要件
管理業務を継続的に行えるだけの一定の財務的安定性が求められます。
業務運営体制の整備
- 業務規程(社内ルール)の整備
- 管理受託契約の適正な締結体制
- 重要事項説明を行う体制
- 苦情処理、相談対応体制(記録含む)
主な義務
- 業務管理者の設置
- 管理受託契約書の法定記載
- オーナーへの重要事項説明
- 誇大広告・断定的判断の禁止
- 財産の分別管理
- 管理受託契約の相手方に対して定期的に報告(最低限年1回)
実務上の注意点
- 宅建業免許を持っていても、管理業登録が別途必要になる場合がある
- 「管理会社」と名乗る以上、登録の要否確認は必須
- サブリース関連は行政のチェックが特に厳しい分野
③ 不動産投資顧問業とは
制度の趣旨・概要
不動産投資に関する助言業務について、投資者保護の為に一定の信頼性・透明性を確保するための任意登録制度です。
不動産投資は金額が大きく、一般投資家にとってリスクも高いため、
- 無責任な助言
- 根拠のない利回り提示
- 不透明な報酬体系
といった行為を抑制する狙いがあります。
登録すると、『不動産投資顧問業者』と名乗ることができ、国土交通省のWebサイトにも記載され、対外的な信用が増します。
登録後は5年毎の更新が必要です。
根拠
- 国土交通省の不動産投資顧問業登録規定
(※法律ではありません)
登録の位置づけ
- 任意登録制度
- 登録しなくても、助言行為そのものが直ちに違法になるわけではありません
登録区分
- 一般不動産投資顧問業
⇒ 個人投資家、中小事業者向け - 総合不動産投資顧問業
⇒ 大規模案件、法人投資家向け
どんな業務か
- 不動産投資に関する助言
- 収益分析・投資シミュレーション
- 投資判断のための情報提供
※ 不動産の売買・媒介を行うと、宅建業に該当します。
実務上の注意点
- 「助言」と「仲介」の線引きが非常に重要
- 成功報酬型の設計には注意が必要
- 金融商品取引法との関係も意識する必要あり
3制度の違いを整理すると
これら3つの制度は、
- 何を守る制度か
- どの業務を対象としているか
- 登録が義務か任意か
が大きく異なります。
最後に|登録制度の違いを表で整理
| 項目 | 宅地建物取引業 | 賃貸住宅管理業 | 不動産投資顧問業 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 宅地建物取引業法 | 賃貸住宅管理業法 | 国交省告示・ガイドライン |
| 制度趣旨 | 取引の安全・消費者保護 | 管理業務の適正化 | 投資助言の信頼性確保 |
| 登録の性質 | 免許制(必須) | 一定規模以上で必須 | 任意 |
| 主な業務 | 売買・賃貸の代理・媒介 | 賃貸住宅管理・サブリース | 不動産投資の助言 |
| 国家資格要件 | 宅地建物取引士 | 宅建士等(業務管理者) | 特定資格なし |
| 行政処分 | あり | あり | 登録取消等 |
| 実務上の注意 | 媒介行為の有無 | 管理戸数・サブリース | 仲介との線引き |
【不動産取引の実行フェーズ】
└── 宅地建物取引業
・売買・賃貸の代理/媒介
・契約成立に向けた関与
・重要事項説明
・仲介手数料
【不動産の保有・運営フェーズ】
└── 賃貸住宅管理業
・賃貸住宅の管理受託
・家賃管理、修繕、入居者対応
・サブリース(マスターリース)
【投資判断の検討フェーズ】
└── 不動産投資顧問業
・投資戦略の助言
・収益性・リスク分析
・市場・エリア分析
行政書士からのひとこと
不動産業では、
「どの登録が必要か分からないまま業務を始めてしまう」
ことが最大のリスクになります。
業務内容・報酬形態・広告表現によって、
必要な登録や対応は変わります。
不安がある場合は、
早い段階で制度整理を行うことが、
結果的に事業のスピードと安全性を高めます。

